9日には日経平均株価が歴代6位の上昇幅を記録したが…

9日には日経平均株価が歴代6位の上昇幅を記録したが…(撮影:尾形文繁)

日本株市場は来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)などを前に神経質な展開が続く。市場関係者からは「疲れる相場」との声も漏れる。ファンドマネジャーやストラテジストとして長年にわたってマーケットを見続け、経済番組のコメンテーターとしても活躍した瀬川剛氏(現・瀬川投資研究所代表)に年内の株式相場の行方などを聞いた。
 株式相場の厳しい状況は峠を越えたとみている。①一部のリスク資産の価格が戻り歩調、②投資家からの償還請求に伴う海外のヘッジファンドの売りが8月末で一巡したとみられる、のが主な理由だ。

 今回の株価下落の最も大きな要因は米国の金融政策の正常化に対する不安。連邦準備制度理事会FRB)による長期間の金融緩和でジャブジャブになり、リスク資産へ向かっていたおカネが、利上げをきっかけに逆流するのではないか、との懸念がくすぶる。中国景気や国内のマクロ指標に神経質になるのも、そうした心配が根底にあるからだ。

瀬川投資研究所の瀬川剛代表(撮影:今井康一)

 実際、リスク資産の価格形成には投資家の不安心理が反映されている。まず、原油などコモディティが急落。次に売られたのが欧州債。一時はマイナス金利の状態まで買われた経緯があり、その反動が出た。その後は一部の投資家の資金が中国株式へ向かい、個人の買いも相まって急騰を演出したが、6月中旬には急激な値下がりに見舞われた。

 ところが、中国株の値下がりにも日本株は当初、反応薄だった。テクノロジー銘柄を中心に輸出関連株の上値は重かったが、食品、医薬品株などを無理やり買い上がってしまった。そうした“不健全”な状態が8月中旬まで続いて結局、大幅な下げを余儀なくされた。

 ただ、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物は一時、1バレル=37ドル台まで売られたが、直近は45ドル前後の水準まで回復。欧州の株式市場でも下落の先導役だった独自動車3大メーカーのBMWダイムラーフォルクスワーゲンの株価が8月10日高値の水準には届かないものの、最近はいずれも堅調な値動きとなっている。3社はいずれも中国でのプレゼンスが高く、これを嫌気した売り物などがかさんだが足元は反発に転じているのだ。