Windows ストア、Win7の「Windows 10強制アップデート」で普及を狙う

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 日本マイクロソフトが、5月13日に公開した修正プログラム「KB3095675」によって、Windows 10へのアップグレードがより強力に推奨されることになった。

 同社では、7月29日までの期間限定で、Windows 7およびWindows 8.1ユーザーに対して、Windows 10への無償アップグレードを提供しており、これまでにも、これらのユーザーに対してコマメにWindows 10へのアップグレードを推奨してきた。

 だが、新たな更新プログラムがインストールされて以降、画面上には「Windows Updateの設定に基づき、このPCは次の予定でアップグレードされます」と表示され、アップグレードの予定日時も示されている。Windows 10へのアップグレードを前提とした内容へと変化しているのだ。

 やっかいなのは、この文言が表示されたアプリの右上の[X]ボタンを押しただけでは、アップグレードを拒否したことにはならないという点だ。[X]ボタンを押してもアプリが閉じるだけで、記載されたスケジュールでWindows 10にアップグレードされる。

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Windows 10が推奨される更新プログラムとして登録され、インストール日時が指定される。キャンセルする場合は、日時の下にある「ここ」のリンクをクリックする必要がある

 これまでのWindowsの操作は、[X]ボタンさえ押せばアプリが閉じたり、キャンセルされたりするのが一般的。実際、これまでのWindows 10へのアップグレードを勧めるアプリも、[X]ボタンでアップグレードを拒否できた。実際、日本マイクロソフトでも、[X]ボタンを押せばキャンセルできると訴えてきた。だが、今回はそれだけではキャンセルできない。この操作設定は、「マイクロソフト社内で定めている操作規定に違反しているのではないか」という指摘も一部にあるほどだ(関連リンク)。

 いずれにしろ、アップグレードしたくない利用者は、[X]ボタンを押しただけで安心せずにしっかりとアップグレードを拒否をする操作まで行なっておく必要がある。

 そうしないと、朝起きたときに、使っていたWindows 7搭載PCが、Windows 10に変わっていたということになりかねない。

 事実、そうした「事件」はいくつも起こっている。

 日本マイクロソフトのサポートセンターにも問い合わせが殺到しており、同社では5月21日から「Windows 10 アップグレードに開始された後のキャンセル方法」について動画を公開。知らないうちにWindows 10にアップグレードされてしまった場合の回避方法を告知している。

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5月21日から「Windows 10 アップグレードに開始された後のキャンセル方法」について動画で公開している

Windows 10へのアップグレードを強く推奨する理由

 日本マイクロソフトが、Windows 10へのアップグレードを強く推奨するのには理由がある。

 ユーザーにとっては、これまで使用していたWindows 7Windows 8.1に比べても、同じPCを使用していながら起動時間が短縮。さらに、ウェブブラウジングの高速化といったパフォーマンスも向上するというメリットが享受できる点がそのひとつだ。また、常にセキュアな環境が提供されるというメリットもある。

 そして、Windows 10は、最後のメジャーバージョンアップと言われており、今後の機能強化は、Windows 10をベースに行なわれることになる。

 7月にも公開される「Windows 10 Anniversary Update」をはじめ、今後提供される最新機能はすべてWindows 10上で提供されることから、今、無償でWindows 10にアップグレードしておけば「Windows as a Service」という考え方のもと、最新の機能が常に利用できるというわけだ。

Windows ストアを通じて、安定的な収益モデルを確保する

 一方で、マイクロソフトにとっても、多くのユーザーをWindows 10にアップグレードしておきたい理由がある。

 サポートコストの低減や、最新技術を体験してもらうことで、新たなPCへの買い換えを促進するなどの理由があるが、なかでも最大の理由は、Windows ストアを通じて最新アプリ/コンテンツを販売する仕組みについて構築を急ぎたいという点が挙げられるだろう。

 Windows ストアは、Windowsアプリやコンテンツなどを購入できるマーケットプレイスだが、最も普及しているとされるWindows 7では、Windows ストアから提供されるWindowsアプリを購入するといった使い方ができない。だが、Windows 8.1以降であれば、Windows ストアで、Windows対応アプリを購入するといった提案が可能だ。そして、Windows 10では、UWPアプリを入手できるようになる。

 Windows ストアを通じたアプリの販売によって、サードパーティが開発した製品でも、マイクロソフトには3割の販売手数料が手に入る。言い換えれば、マイクロソフトWindows ストアを通じて安定的な収益モデルを確保するには、Windows 7のユーザーをいかにWindows 10に移行させるかが重要な鍵になるのだ。

 マーケットプレイスを通じた収益モデルは、アップルがAppStoreで、グーグルがGoogle Playで成功しているビジネスモデルだ。つまり、モバイル時代、クラウド時代の収益モデルの構築に一番遅れているのが、マイクロソフトWindows ストアということになる。

 マイクロソフトでは、2018年頃までに、全世界で10億台のWindows 10搭載デバイスを普及させたいとしているが、この環境をいち早く確立することが、アプリで安定的に収益を確保するためのポイントだ。

 マイクロソフトは、UWPアプリの増加に向けて、各種施策に積極的に取り組んでいる。マルチプラットフォームで、ネイティブモバイルアプリを開発するためのXamarinもUWPアプリを増やすための重要な施策になる。

 無償アップグレードの仕組みがある今こそ、Windows 7ユーザーをWindows 10へとアップグレードさせることが、マイクロソフトにとっては将来に向けたビジネス基盤を構築するための最大のチャンスといえるのだ。