米下院 サウジ法案可決 オバマ政権は拒否権発動へ
新法はテロ支援者制裁法(JASTA)と呼ばれ、共和、民主両党のほか無所属のサンダース上院議員も提案者に加わった。現行法では、外国政府は民事請求から免責されているが、新法が成立すれば、これが可能となる。
米同時多発テロは、実行犯19人のうち15人がサウジ人だった。だが▽英語を話せない▽米国訪問は初めて▽高校を卒業していないにもかかわらず、パイロット資格を取得し、極めて複雑なテロを実行した--ことなどから、米国では国際テロ組織「アルカイダ」に加え、サウジ政府も関与したとの疑念が根強い。
遺族らが損害賠償を求めて提訴したが、ニューヨーク地裁は15年9月に門前払いしたため、新法制定の動きが加速した。
米議会は6月、02年に上下両院の合同委員会が作成したものの、ブッシュ前政権が公表を阻んだ調査報告書を初めて公表。報告書によると、サウジ政府が関与した直接の証拠はなかったものの▽サウジ政府職員とみられる人物2人が、テロ実行犯2人の住居やパイロット養成学校入学を手配▽サウジのバンダル駐米大使夫妻が、その政府職員とみられる1人に約7万ドルの小切手を渡すなど金銭面で支援--していたという。
一方、サウジ政府は法案に激しく反発。法案が成立すれば、訴訟で資産が差し押さえられる可能性があるとして、米国債など約7500億ドル(約75兆円)の米国資産を売却する構えを示している。
米国の同盟国であるサウジとは、イランとの関係改善を巡り関係が悪化。オバマ政権は、これ以上ぎくしゃくさせたくないとの思いが強く、法案に拒否権を発動する考えを既に示している。