ビタミンDが脂質抑える仕組み解明 がんやメタボに効く新薬の実用化視野

 ビタミンDが体内の脂質量を抑制するメカニズムをハムスターの細胞を使って解明したと、京都大の研究チームが26日付(米国時間)の米科学誌「セル・ケミカル・バイオロジー」電子版で発表した。将来的には、メタボリックシンドロームや脂質が影響するがんなどの予防に効果がある人工的なビタミンDの開発や、新薬の実用化につなげたいとしている。

 チームによると、ハムスターの細胞内でビタミンDが存在する場合、脂質をつくる「指令塔」のタンパク質「SREBP」と、同タンパク質と複合している別のタンパク質「SCAP」の量がそれぞれ減少していることが、分かった。

 詳しく調べると、ビタミンDの作用で2つのタンパク質の複合体が壊れてSCAPが分解されるとともに、SREBPも分解されていた。この結果、SREBPが指令を出せないようになり、脂質の合成が抑制されたという。

 これまでビタミンDとメタボやがんの予防効果の関連性は分かっていたが、メカニズムは不明だった。
 一方、一般的にビタミンDは骨を強くする働きもあるが、サプリメントなどでビタミンDを摂取しすぎると、体内に結石ができる可能性もあるという。

 チームの京大物質-細胞統合システム拠点(iCeMS(アイセムス))、上杉志成(もとなり)副拠点長(化学生物学)は「メカニズムが分かったことにより、安全性を確認した上で脂肪ができにくい『人工ビタミンD』を開発し、代謝疾患やがんの新薬開発につなげたい」と話している。