南京日記1937年11月24日

南京日記1937年11月24日

  ロイター社が予定より前に、国際委員会の計画を報道してしまった。ローゼン博士は昨日、東京が既にロイターの報道に基づき抗議した、とラジオで聞いた。ラジオでは、既に南京を退去した米国大使館がそのような計画にどんな関わりがあるのかを問いていた。ローゼン博士はそれに関し、米国海軍を介して上海のドイツ領事館に次のような電報を送った。

  ドイツジーメンス社員ラーべを代表とし、英国、米国、デンマークとドイツ人会員からなる当地の私設国際委員会は、南京内における戦闘の際の市民の保護地域を設定する目的で、日支双方に呼びかけたものである。米国大使は総領事館を介してこの提案を、上海の日本大使、そして東京に転送した。新しい安全地区は、緊急時に非戦闘員にのみに安全な避難場所を提供するものである。

  ドイツ人が代表を務める事実に鑑み、この人道的な提案を非公式に、しかし慈愛を持って後援してくださることを切に願う。

  私はここに暗号本(注)しか持っていない。この電報を東京に転送し、東京からの直接の返答を米国海軍を通してこちらに送って頂くことをお願いする。 ローゼン

  中央病院医長、J.Henry Liu博士が町を退去した。そして彼が委託した二人の医師も、逃亡してしまった。米国人宣教師の医師たちが持ち堪えなければ、この多数の負傷者はどうなってしまうだろう。
 
 私はその間にも、寄付されたトラックを活用していた。我々の運転手、Liuが徴発を免れる為にドイツ旗を掲げて運転した。支那の兵士は今や、目の前に現れるトラックを片端から没収していた。クリスティアン・クレーガー(Carlowitz社の)から聞いたところに寄ると、Ming Lin(命令)が発表された由。南京全市民への退去命令である。

暗号本:外務省使用の暗号辞書。各ドイツ語単語が5桁の数字で記されている。安全性に問題があったところから、機密電報には使用されなかった。