「工場のアマゾン」ミスミグループ本社がモノづくり大国復権に挑む

3D図面で部品を簡単製作 「工場のアマゾン」ミスミグループ本社がモノづくり大国復権に挑む!

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メヴィーで注文できる金属加工部品。商品の試作や量産に欠かせない

 工場で使う部品や工具のネット通販を手がけるミスミグループ本社が昨年6月、3次元(3D)設計図面データをもとに金属加工部品をつくる新サービス「meviy(メヴィー)」を始めた。商品開発や生産に携わる企業の担当者(利用者)は3D図面さえ用意すれば、2次元(2D)の紙図面を作成したり、加工業者を探したりしなくても簡単に部品を入手できる。「工場のアマゾン・ドット・コム」の異名を持つ急成長企業が、モノづくりをさらに進化させようとしている。

 昨年6月、東京都内で催された「設計・製造ソリューション展」。ミスミのブースには、サービス開始直後のメヴィーのデモを見ようと、人だかりができていた。

 デモでは、専用サイトに3D図面を表示し、材質などを指定したとたん、数メートル離れた場所の工作機械が部品を製作。あまりの素早さに来場者から感嘆の声が上がった。サービスの開発責任者で、金型企業体事業開発室の吉田光ジェネラルマネージャーはこの瞬間、成功を確信したという。

 ミスミはもともと、顧客が求める部品をネット上のカタログから選んで注文できるサービスを展開してきた。さまざまな部品を標準化し、サイズや形状ごとに分類することで、特注の必要をなくしたのが特徴だ。ただ、複雑な形状の場合は標準化するのが難しいという弱点があった。
 これに対し、メヴィーは3D図面さえあれば、かなり複雑な部品にも対応できる。
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 「今しかない」
 ITの発展で、3D図面の作成が容易になりつつあった3~4年前、吉田氏は新サービスを思いついた。
 当時、吉田氏は赴任先の中国から帰国し、同開発室に異動したばかりだった。ともに中国で働いた中川賢治氏と芝田篤史氏も配属され、3人を中心にチームが組まれた。

 3人は中国赴任中、複雑な形状の部品にも対応できるネット通販を検討したことがあった。しかし、カタログから選ぶ方式にこだわった結果、商品が膨大な数にのぼり、失敗に終わった。「リベンジの今回は従来の発想から抜け出そう」と3人は誓った。
 ただ、3D図面を扱う過去に例のないサービスとあって手本がない。そこで、構想段階からIT企業に協力を呼びかけることにした。

 「あの企業は技術を持っている」との噂を聞きつけては、世界各地に足を運んだ。そして探し当てた複数の協力先と連携しつつ検討を重ね、画期的なサービスを始めることができた。今後は、金型関連の部品だけでなく、対象範囲の拡大も検討していくという。
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 ミスミは、昭和52年に現在のビジネスの原型となる金型部品のカタログ販売をスタート。その後、販売対象の拡大やネット化に取り組み、平成22年には他社の部品も扱い始めた。その結果、14年3月期に516億円だった連結売上高は29年3月期に2500億円を超える見通しだ。それでも、芝田氏は「既存ビジネスに安住してはいけないと思った」。この危機感がメヴィーの開発に結びついた。

 日本の「モノづくり力」の低下が指摘されるようになって久しい。旧民主党政権時代の円高で工場の海外移転が加速し、労働人口の減少にも見舞われている。

 「これまで熟練者が支えてきたが、先細りしていくのは明らか。ICT(情報通信技術)を使った新しい仕掛けが必要でした」
 吉田氏は、メヴィーをモノづくり大国復権の弾みにしたいと意気込む。(経済本部 井田通人)
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meviy(メヴィー) 金属加工部品を注文できるネット通販サービス。専用ソフトで3D図面データを自動認識して画面上に再現、最短30秒で価格や納期の見積もりができる。そのデータは工場に送られ、早ければ2日で出荷される。