あなたの知らない 更年期の真実

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あなたの知らない 更年期の真実

いきなりですが問題です。病気に詳しい看護師。その看護師が自分に症状が出ながら2年半気づかず、看護師を診察した5人の医師もわからなかった病気はなんでしょうか。正解は…更年期障害。結構こわい更年期障害の真実です。(報道局・中川早織)

めまいにおう吐 →異常なし

看護師をしながら4人の子どもを育ててきた森永ゆみさん。体に異変を感じたのは5年前、48歳の時です。突然のめまい、そしておう吐。看護師の経験から脳卒中を疑います。一刻を争うと思い家族に付き添われてふらふらで救急外来に。精密検査を受けました。その結果は… “異常なし”。

異常なし、異常なし、異常なし…

「めまい」の症状から耳鼻科の受診を促されて足を運びます。結果は“異常なし”。
そのあともさまざま症状が出てきます。
食欲不振となり内科へ。 “異常なし“。
股関節が痛くなり、当然のように整形外科へ。 “異常なし”。
両手の痛みで、リウマチ内科へ。 “異常なし”。
5つの診療科を受診しても医師の診断は、“異常なし”なのです。

仕事も子育ても親の世話も

「調子が悪いのに、こんなに症状があるのになんで異常がないのだろう。どうしたらいいかわからなかった」
当時の困惑した気持ちを話す森永さん。調子が悪いのに加えて、働き盛りで重要な仕事もたくさんありました。また4人の子どもを育てていかなければいけない。さらに離れて暮らす親の看病。こうした状況も体や心に影響していきました。その様子に最も戸惑っていたのは森永さんのすぐそばの人でした。

取っ組み合う母と子

夫の健司さんです。転勤などもあり、頼れる親族がいない時でも、夫婦で協力して子どもを育ててきました。当時のゆみさんは「ぼくが仕事から帰宅すると妻が疲れてソファで寝ていたり、それもべたーと倒れるようだった」そうです。
そして「急に怒り出すんです。そのうえ娘と取っ組み合い、殴り合いのケンカですよ。こう(手を大きく横に振る)手が出るんです」。それまでは考えられない光景が目の前で繰り広げられます。ゆみさんの具合が悪いことから健司さんも仕事を休むことが出てきます。
インタビューの途中、健司さんは口を押さえ、しゃべれなくなりました。質問をしても手でさえぎりました。「すいません・・」とだけ言いながら。
そして泣いていました。口をぎゅっと結んで。「出口の見えないトンネルに家族で入ったようでした。限界を感じながら日々を過ごすのが精いっぱいでした」

女性ホルモンが…ない

森永さんの不調の原因がわかったのは、偶然でした。
たまたま健康診断を受けた婦人科。血液検査をしたところ、70以上あると安定すると言われる女性ホルモンの値。それがほぼないという結果でした。診断は“更年期障害”。
辞書によると「《更年期障害》卵巣機能の低下のためホルモンのバランスが崩れて現れる種々の症状」です。閉経前後に女性ホルモンが急激に減るのが主な原因。森永さんは「婦人科系の病気とは無縁だったので、更年期障害は大丈夫だという思い込みがありました。不調の原因が全部女性ホルモンだなんてという感じです」と当時を振り返っていました。

たった1枚の貼り薬で

森永さんが受けた治療は女性ホルモンを補充するもの。1日おきに、1枚の貼り薬をお腹に貼る、それだけです。それだけで症状がうそのように改善していきました。
「水やりを忘れた花が、水をもらってぐっと起き上がってくるようでした。更年期を理解していればつらい日々を送らずに済んだのかもしれません」
悔やむ気持ちをそう語っていました。

症状多すぎ!

更年期障害が、それだとわかりにくいのは、その症状の多さにあります。ごらんの図は専門医に聞き取ったもの。それだけで50種類近く。よく知られているイライラやほてりだけでなく、関節痛や腰痛、口の渇きや耳鳴りもあるのです。私、知りませんでした。女性ホルモンは全身に関わるため、症状も多岐にわたるそうです。

現代女性を襲う四重苦

今の女性の更年期障害。それを四重苦と表現した人もいます。NPO法人「女性の健康とメノポーズ協会」の三羽良枝理事長です。メノポーズは更年期のこと。ここで週に2回行われる電話相談には年に2000件を超える相談が寄せられます。“症状がひどく、育児と両立ができず退職した”“義理の父親の介護も重なり大変つらい”三羽さんは「働く女性が増え、出産が遅くなっています。今の女性は更年期の時期に▼子育て、▼親の介護、▼仕事、▼更年期障害のつらさが重なります。四重苦です」と言っていました。

正しく知って“更年期”

森永さんのような女性を減らしたいと活動を始めた女性たちのグループもあります。更年期障害について学び、「メノポーズカウンセラー」という民間資格を取った人たちで、更年期の症状や治療方法を知らせるフリーペーパーの発行を始めています。小さめの手に取りやすいデザインにして、医療機関、美容サロンなどに置いています。
フリーペーパーの編集長でメノポーズカウンセラーの越川典子さんの「更年期を過ぎても、何十年という人生が待っている。いかに早く対応するかで人生が大きく変わってきます」という言葉が印象的でした。

取材を終えて

取材チームで、こんな会話がありました。 「更年期っていうと、なんかもう“枯れた”って思われてしまう。おかしいよね」そう、そのとおり。おかしいです。
更年期の“更”の字は、“あらためる”という意味があります。人生の折り返し地点で、これからという時期です。不調があれば婦人科などを受診して相談してみてください。折り返し地点をうまく通り過ごせるかもしれません。
そして時には不調に耐えられない時もあるかもしれません。でもメノポーズカウンセラーの人が言ってました。「私、子どもたちに“もしイライラしてたらごめんね。それ私のせいというよりホルモンのせいだから”と伝えておいたんです。家族で共有していくということ、すごく大事と思います」

「更年期=人生の折り返しの不調を乗り越えて次に向かう時期」
私の辞書にはそう書いておこうと思います。