中国新空母に対抗できるか 艦隊の“頭脳”護衛艦「かが」への期待

【月刊正論7月号】
中国新空母に対抗できるか 艦隊の“頭脳”護衛艦「かが」への期待 元海将 伊藤俊幸


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出港する護衛艦「かが」(酒巻俊介撮影)

 在外邦人救出の際には「かが」の就役によって「艦隊の頭脳」が強化され、島嶼防衛での活躍も期待でき、「日本の抑止力は強化された」といっても良いでしょう。更に対潜水艦戦に重要な役割を果たす、哨戒ヘリコプター5機が同時に発着艦できる広い甲板を持つ「かが」は、艦隊全体のヘリの整備工場としての役割も担います。特にヘリの作戦運用全体を指揮できる航空隊司令が乗艦できるようになったことで、そのメリットはより大きくなったといえましょう。

 一方災害派遣でも「かが」は威力を発揮します。艦内には床下にランケーブルを張り巡らせた巨大な区画があり、いざ災害のときにはメディアや自治体の関係者も収容できるようになっています。巨大地震などで陸上に大きな被害がある際は海から被災地へ行くしかない、その場に「自治体の指揮機能」と「病院機能」を持った「かが」が急行するわけです。  

 実際、私が呉地方総監をしていたときも、和歌山県での防災訓練に同じようなヘリ搭載護衛艦「いせ」を派遣しました。その際は物資を大量・高速輸送できるオスプレイを「いせ」に着艦させ、艦内では和歌山県庁の職員と共にトリアージ訓練をしました。「かが」でも当然、同様の運用が可能です。  

 もちろん、人員輸送にも使えます。万が一、朝鮮半島有事といった場合には、在韓邦人救出のために韓国の近海に出動することになるでしょう。残念ながら韓国の同意が得られないため、空自輸送機の韓国国内乗り入れは難しいと思いますが、港に集まった邦人を沖合の「かが」までヘリでピストン輸送することは十分可能だと思います。

 伊藤俊幸(いとう・としゆき)氏 昭和33年生まれ。防衛大学校卒業後、海上自衛隊に入隊。潜水艦「はやしお」艦長、第2潜水隊司令統合幕僚学校長、呉地方総監などを歴任した。平成27年に退官。現在、金沢工業大学虎ノ門大学院教授