1年延命の薬、公的負担どこまで 費用対効果、世論調査

1年延命の薬、公的負担どこまで 費用対効果、世論調査

水戸部六美
2017年6月13日14時10分


 1年延命できる薬に公的保険からいくらまで支出を認められるか、厚生労働省が今夏に世論調査に乗り出す。結果は高額な薬の費用対効果を判断する基準に使い、医療費の抑制につなげる。ただ、調査結果は延命にかける医療費の目安となりかねず、議論を呼ぶ可能性がある。

 質問案は「完全な健康状態で1年間生存することを可能とする医薬品・医療機器等の費用がX円であるとき、公的な保険から支払うべきか」。額を上下させ質問を重ね、適正だと思う値段を面談で聞き出す。対象者は住民基本台帳から無作為に抽出。年齢や性別、所得が偏らないよう数千人規模の調査とする見込みで、結果は秋までに公表する。

 結果は、評価対象の新薬ごとに製薬会社提供のデータと突き合わせる。データは新薬の使用で増えた費用と、延びた生存年数にその間の生活の質を加味した「QALY(クオリー)」という値を組み合わせたもので、その費用対効果を5段階で評価。「悪い」「とても悪い」となった薬は、代わりの治療法がないことなどがなければ値下げの検討対象とする。

 ログイン前の続き今年度から、がん治療薬「オプジーボ」など医薬品7種類と医療機器5種類の価格に反映させる費用対効果に試行的に導入。2018年度以降に保険適用する高額薬や医療機器から本格採用することを目指す。

 質問案は14日の中央社会保険医療協議会厚労相の諮問機関)の部会に示され、費用対効果の詳細な制度設計を議論する。15年度の医療費は約42兆円で、ここ10年で8兆円以上増加。うち約2割は薬剤費が占める。患者の自己負担割合は1~3割で、残りは公的保険と税金で賄っている。

 英国では類似の仕組みを導入済みだ。新薬を使うことで1QALYあたりの費用が2万~3万ポンド(280万~420万円程度)の目安を大幅に超える薬は、原則的に税金でまかなう対象から外している。(水戸部六美)