「モンスターペアレント」誕生は教員と学生の力関係の変化が原因か、「保護者への配慮」で時間取られる教員

モンスターペアレント」誕生は教員と学生の力関係の変化が原因か、「保護者への配慮」で時間取られる教員

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 前回、医師や教員などの聖職者がブラック企業以上に過酷な労働を強いられていることを指摘した。以前は医師や教師は「聖職者」と拝められ、患者や生徒・学生やその保護者は少しおかしいなと思っても、命や成績を“担保”に取られているものだから表立って文句を言うことができなかった。

 30年ほど前は医療ミスが疑われても「最善を尽くしてくれたはず?」と考えて“泣き寝入り”をしていたが、最近では「治療を受けて死亡したのは何かのミスがあったに違いない」と大きな問題がなくても訴訟を起こす人も増えてきている。

 学校に関しても体罰が当たり前だったのは遠い昔話で、体罰は暴力であり、厳しい指導は「パワーハラスメントパワハラ)」と言われるようになった。
 暴力はどんな理由であれ許されることではないが、厳しい指導に関してはパワハラかどうかの認定は難しい。「パワハラと言われてはかなわない」と考える教員が、生徒や学生を厳しく指導しなくなったのも時代の流れだろう。

 相対的に学生と教員の力関係が変わってきたことに加え、完全主義的な人が増えてきたこともモンスターペアレントを生む原因かもしれない。

 前回も指摘したように教員の過剰労働が問題になっているが、その原因は生徒に対しての教育を中心に考えてきた時代とは異なり、保護者への配慮のためにかなりの時間がとられるようになったためだろう。以前なら「先生の言うことに間違いはないから任せておいた方が良い」との考え方が保護者に多かったと思われるが、現在では「私の子供がこうなったのは学校が悪いのでは?」と考える人が増えてきたのかもしれない。

 特に一人っ子の家庭では保護者も力が入り、細かいことまで気になるのだろう。学校の役割に過剰な期待をしすぎて、細かいことまで気になりだしたら相手が悪いと考える前に自分のストレスについて考えてみたほうが良い。
 現代社会はいろいろなストレスにさらされ、セロトニンやアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質が不足してくる。特にセロトニンは癒やしの脳内物質といわれ、気を使い過ぎたりしてセロトニンが減ってくると細かいことが気になり、攻撃的になる。特に日頃の不満があってもグッと感情を押し殺す人はたまった感情が爆発しやすい。

 ストレスをためずに小出しに愚痴を言ったり、スポーツなどで発散ができればいいが、次第に不満がたまって突然切れたり、他人からモンスター化していると指摘されたら自身のストレスケアにも目を向けたほうが良いだろう。

 管理職の対応も重要だ。一時、「患者さま」と呼んで無理難題を聞き入れてきた医療側が「モンスターペイシェント」を生む原因と言われた。管理職が事なかれ主義で、大きな過失もないのに平身低頭謝る姿を見て、病院を去る医療関係者も多かったと聞く。

 いわれのない非難には体を張って部下を守るような管理職は従業員からも高く評価され、結果的に事故も少なく業績も上がるだろう。校長や教頭などの学校の管理職が少々の軋轢(あつれき)を恐れずに毅然(きぜん)とした態度で保護者と接することがモンスターペアレントへの対応には大切だ。