AIが広げる!?芸術の世界 小説や自動作曲のプログラムも…新たな可能性

AIが広げる!?芸術の世界 小説や自動作曲のプログラムも…新たな可能性


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ウェブ上に公開されている嵯峨山茂樹・明治大教授らが開発した自動作曲プログラム「オルフェウス

 人工知能(AI)を使い、芸術作品を作る試みが進んでいる。AIで作った小説が文学賞の1次選考を通過して話題となったほか、自動作曲のプログラムも登場。作品の知的財産権の扱いも議論されるなど、AI技術の持つ新たな可能性に期待が高まっている。

◆使い手の個性も
 歌詞を入力すると簡単に旋律や伴奏の付いた曲ができる自動作曲プログラムが、嵯峨山茂樹・明治大教授らが開発した「オルフェウス」。ウェブ上で誰でも使うことができ、作曲数は数十万曲にのぼる。
 嵯峨山教授は、日本語特有の自然な抑揚に合わせて旋律を生み出す方法を考案。作曲には和声など確立された理論があるためプログラム化しやすく、AIでの作成により適しているという。
 作曲する際には音域や拍子など、さまざまな要素を指定できるため、AIでありながらも「使い手個人の個性が出た作品にもなる」と嵯峨山教授。自身も「作曲は子供の頃からの夢だった」という歌詞の曲を“作曲”しウェブで公開中だ。

◆あらすじも作成
 名古屋大の佐藤理史教授らのチームはAIを使った小説執筆に取り組む。平成27年に作品を文学賞に応募、1次選考を通過して世間を驚かせた。人間があらすじと文章の構造を作成し、AIが単語や形容詞を組み合わせて文章にする仕組みを考案。28年には、あらすじも作成できるよう進化させた。小説を作る全過程をAIで行うことが可能になり、佐藤教授は「一歩前進した」と話す。

◆作者は誰なのか
 AIによる芸術制作の試みが進むにつれ、「作者は誰か」という問いも浮上している。政府の知的財産に関する専門家会議でも、AIによる創作物についての議論が行われた。
 嵯峨山教授は「オルフェウスは人間が曲を作るためのツール」としており、作り手はあくまで人間との考えだ。
 一方、専門家会議で委員を務める上野達弘・早稲田大教授は、現行法ではAIが作ったものに著作権はないとした上で「AIと人間が作ったものの境目について、現状では区別が曖昧だ」と指摘。「ポイントは人間の関与の程度」と話す。

 多摩美術大の久保田晃弘教授は「作者という概念が重要ではなくなってくるのではないか」と予測する。AIと人の相互作用で新たな芸術が生まれると考えるためだ。
 久保田教授らは、小型衛星に搭載したAIが温度データなどに基づいて作った音楽や詩を地上で受信する試みに挑戦。その詩を彫刻にした作品も作り上げた。久保田教授は「AIが作るものを鑑賞することで、人間の創造性がより広がるのではないか」と話している。