皆既日食と天岩戸伝説
198.皆既日食と天岩戸伝説
米国を横断した皆既日食は99年ぶりということだ。
過去に海外で皆既日食を見た人たちによれば、その瞬間恐怖感に覆われたとの感想が聞かれる。
日本語は、機微の表現が豊かなので「おそれる」ということばを表した漢字を取り出せば二桁はあるだろう。
晴れた日には、眩しい太陽の光が地上に降り注いでいるけれども、われわれは日常見慣れている景色であるし、この情景を特別なものだと改めて感じることは滅多にない人が大半なのではないだろうか。
ところがこの当たり前の景色が突然様変わりして、日中だというのに辺りが暗くなり、そして太陽が消えた…という情景に遭遇したとすれば、皆既日食を体験した人たちが感じた「畏れ」という感覚が臨場感をもって理解できるような気がする。
皆既日食のニュースが世界を駆け巡っていたとき、私は咄嗟に紀記に登場する日本神話「天岩戸伝説(岩戸隠れ)」を思い出していた。
私ごとであるが、私は天岩戸伝説と少しばかりご縁がある。
この伝説の舞台は宮崎県の高千穂であるが、私のご縁というのは後に高千穂ともご縁を持つことになるのだが、高千穂とのご縁以前に、天岩戸の所縁の地が出身地である。
天照大神がお隠れになった天岩戸の寸分の隙間から、アメノウズメノミコトの裸の舞でドンチャン騒ぎに興じる外の神々の様子を窺おうとした瞬間、岩を持ち上げて天高く放り投げた天太刀男尊(アメノタジカラオノミコト)によって、取り払われた天岩戸が着地したところで生誕したというご縁である。
そんなご縁から、当地と高千穂はかねてから姉妹都市であり、天岩戸伝説に因んだ伝統的な儀式も行われている。
太陽神である天照大神が、弟・スサノウノミコトの狼藉に対する怒りから天岩戸にお隠れになったことによって、地上から太陽が消え暗黒の世界になったことを憂いた八百万の神々が、知恵を絞って天岩戸を開き再び地上に太陽が戻ってきた…というのがざっくりとした天岩戸伝説の物語である。
皆既日食によって、天岩戸伝説を連想するのは以上によるものであるが、わが国で観測された直近の日食(金環)は、2012年5月20日であり、次に日本で見られるのは18年後の2035年9月とのことである。健康上問題がなければお目にかかれそうである。
民主党政権の悪夢の3年は、日本が乗っ取られる一歩手前まで浸食され、国家存亡の危機に瀕していた戦後最悪の時代であった。
今にして思えば、この年の日食を契機に潮目が変わり、ここから7ヶ月後の年末には安倍政権が奇跡の復活を遂げ、土壇場で日本の危機が救われたのである。
99年ぶりの今回の米国横断皆既日食は、岩戸開きの象徴であり、新たな時代への転換を告げる狼煙かもしれない。