尖閣領空で中国ドローン撃墜する日
尖閣領空で中国ドローン撃墜する日 海保に白羽の矢が立ったワケ、自衛隊との垣根消える?
中国による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での一方的な海洋進出と挑発が止まらない。新たな手段も繰り出し、小型無人機「ドローン」を使った領空侵犯はその象徴だ。小型のドローンとはいえ主権の侵害を放置すれば、中国はさらに挑発をエスカレートさせる恐れが強く、手をこまねいているわけにはいかない。撃墜もいとわない強い姿勢が求められ、白羽の矢が立ったのは自衛隊ではなく海上保安庁だった。(社会部編集委員 半沢尚久)
5月にドローン
ドローンによる領空侵犯は5月に起きた。
海保から連絡を受けた航空自衛隊はF15戦闘機やE2C早期警戒機などを緊急発進(スクランブル)させたが、ドローンは5分弱で海警局の船に戻ったとみられている。空自がスクランブルで出動したのは、現状では領空侵犯や領空接近に対処するのは空自だけに与えられた任務だからだ。
そのためスクランブルは有効な対処とはいえないが、かといって領空侵犯を黙認しているわけにもいかない。中国が頻繁にドローンによる領空侵犯を繰り返せば、空自はただ疲弊することになりかねない。
電波妨害装置で撃退
そこで政府はドローンへの対処策として、海保の巡視船に電波妨害装置を搭載し、ドローンの飛行を阻止する検討に入った。
ドローンは電波で遠隔操作されるため、その電波を妨害することで飛行を不能にする。海保の巡視船は尖閣周辺を航行する中国海警局の船を常時監視しており、船からドローンが飛行すれば即座に対処できる利点が大きい。
いわば目の前を飛ぶハエに海保の巡視船が電波妨害という殺虫剤をまき、撃退するわけだ。電波妨害装置は一式につき数億円で配備できるとされ、実効的な対処を期待できる。
この対処策は空自が担ってきた対領空侵犯措置を海保が補完するものと位置づけられる。
さらに、空自と海保の垣根を取り払う契機となるかもしれない。
実は、空自は10年以上前から海保に、ある提案をしてきた。その提案とは、海保の巡視船に対空警戒レーダーを搭載し、領空に接近してくる航空機を監視する役割を担ってもらうことだ。
巡視船に対空レーダー
現状では領空に接近してくる航空機を監視するのは空自の地上レーダーだ。ただ、水平線より遠方の航空機は探知できないため、E2C早期警戒機も監視飛行に当たっている。
一方、海保の巡視船は尖閣周辺など常に中国との最前線に展開している。前方展開の利点を生かして巡視船に対空警戒レーダーを搭載し、その情報を空自に伝達するシステムを導入すれば、E2Cの負担は大幅に軽減できる。
こうした措置を可能とする法的根拠として、海上保安庁法を改正し、領空の治安を維持するための警察権の行使として必要な措置を取ることができる規定を設けることが必要とされる。
しかし、巡視船への対空警戒レーダー搭載が10年以上たっても実現していないことを踏まえ、空自OBはこう証言する。
5月以降、中国のドローンを使った挑発は起きていないが、いつ活発化させてもおかしくない。空自幹部はドローンに続く新たな挑発として、「海警局の船からヘリコプターを頻繁に離着陸させ、領空侵犯を繰り返すのでは」とも警戒する。
そのとき空自と海保はどう対処するのか。後手を踏まないためには両者が垣根を取り払い、融合を進めていくことが待ったなしの課題だ。
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