〈日米2プラス2〉産経・日経「敵基地攻撃能力を」 防衛費増を牽制した朝日・毎日
〈日米2プラス2〉産経・日経「敵基地攻撃能力を」 防衛費増を牽制した朝日・毎日
http://www.sankei.com/images/news/170830/clm1708300005-n1.jpg 北朝鮮が米領グアム島周辺への弾道ミサイル発射計画を公表するなど、北朝鮮をめぐる脅威がこれまでになく高まっている中で、日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)がワシントンで開かれた。「核の傘」の提供を含む米国の日本防衛への関与が確認されるとともに、日本は自衛隊の役割拡大と増強を約束した。
産経、読売、日経が「意義は大きい」「評価したい」と支持を表明し、そのうえで「あとは実行に移すことだ」(産経)、「合意を踏まえ、同盟をさらに肉付けすることが重要だ」(日経)などと、日米同盟の一層の結束を呼びかけた。
自衛隊の役割拡大について3紙は「そこに集団的自衛権の行使が含まれるのは当然である。日米が守り合う態勢をとることが、北朝鮮に核・ミサイル戦力の放棄を迫る強い圧力となる」(産経)、「日米同盟の実効性を高め、アジアの安定にも寄与する。前向きに取り組むことが大切だ」(読売)、「国民に分かりやすく説明し、秋から本格化する防衛大綱の改定作業につなげてもらいたい」(日経)-と歓迎する。
一方、朝日は非を打つことにほぼ終始した。「軍事の言葉が躍るばかりで、外交の姿が見えない」「懸念されるのは、発信されたメッセージの力点が軍事、とりわけ自衛隊の役割拡大に傾斜していたことだ」。集団的自衛権発動には「政府による安保法の恣意(しい)的な拡大解釈の可能性を改めて示した」と批判する。
「実際の配備は何年も先だが、準備を急いでもらいたい」(産経)、「着実に進めねばならない」(読売)、「日本自らが防衛力の強化に動くのは当然だ。(中略)『イージス・アショア』の導入はその一歩」(日経)-との主張に対し、朝日は防衛費増額やミサイル防衛の費用対効果をどう考えるのかと問い、「対米公約だからと既成事実化を図っていい問題ではない」と難じた。
「敵基地攻撃能力」に触れたのは産経と日経だ。産経は「『敵基地攻撃能力』導入を日本側が表明しなかった点は物足りない。必要な措置について腰の引けた態度は、北朝鮮などから侮られる」と苦言を呈し、「安倍晋三政権は防衛費増額や敵基地攻撃能力導入をためらってはなるまい。国民を守り切るために不可欠だからだ」と力を込める。日経も「究極のミサイル防衛ともいえる敵基地攻撃についても検討を始めておくべきだ」と促した。
北朝鮮だけでなく、中国も日米が直面する脅威である。共同発表では日米安保条約5条の尖閣諸島への適用を確認した。産経は「東・南シナ海における中国の身勝手な行動に対抗していく姿勢を改めて打ち出したのは当然」と受け止めた。読売は、河野太郎外相が東南アジア諸国の海上警察機能などの向上に向けて約5億ドルの拠出を表明したことを挙げて「こうした地道な援助を通じて各国と連携し、国際法に基づく海洋秩序を追求したい」と論じた。
北朝鮮の軍事的脅威の陰で、つい置き去りにされがちなのが拉致問題である。「日本の拉致被害者や米国市民らの即時解放を迫ったことも重要だ」。2プラス2の成果として言及したのが産経だけだったのは寂しい。横田めぐみさんが拉致されて今年で40年、常に念頭に置くべき事案ではなかろうか。(清湖口敏)
■日米「2プラス2」開催を受けた社説
【産経】
・同盟の力で難局乗り切れ
【朝日】
・外交の姿が見えない
【毎日】
・連携強化には課題も多い
【読売】
・強固な同盟で「北」を抑止せよ
【日経】
・日米同盟のさらなる肉付けが必要だ 〈注〉いずれも19日付