北朝鮮の核実験強行で近づく最終局面

[FT]北朝鮮の核実験強行で近づく最終局面

2017/9/4 14:45 日本経済新聞 電子版
Financial Times
 北朝鮮が3日に行った核実験に対しては、米韓だけでなく日本や中国、ロシアも懸念を示し、激しく非難した。北朝鮮が実験した新爆弾は同国史上最も強力だ。これが水素爆弾だとする同国の主張は本当かもしれない。金正恩キム・ジョンウン)政権はこの1週間前に日本の上空を通過する弾道ミサイルを発射したばかりで、北朝鮮による挑発はエスカレートする一方だ。
核開発計画について指示する金正恩委員長(右から2人目)とされる写真=朝鮮中央通信・ロイター
核開発計画について指示する金正恩委員長(右から2人目)とされる写真=朝鮮中央通信・ロイター
 だが、国際社会はこぞって懸念を表明したものの、北朝鮮への対応で本当に足並みがそろうことはなさそうだ。それどころか、北朝鮮への圧力強化を主張する米国と、対話を求める中国や韓国との亀裂が深まる恐れさえある。

 米韓は軍事同盟を結んでいるが、トランプ政権と文在寅ムン・ジェイン)政権とでは、北朝鮮の脅威への対応を巡る考えが大きく異なることが一段と明確になっている。これは、トランプ氏がこの危機を巡って「韓国は私が彼らに言った通り、北朝鮮には対話による融和策が機能しないことに気付き始めた。北朝鮮が理解するのは一つしかない!」とツイートしたことであらわになった。

 トランプ氏がツイートで暗示した機能する「一つ」が軍事力であることは明白だ。これは同氏が以前、金政権に対して警告した「炎と怒り」発言とも一致する。だが、同氏が武力行使を警告すればするほど、それが実行を伴わなければ、こけおどしだと取られるリスクは増す。北朝鮮を攻撃すれば、いかなる場合でも韓国と同地域の米軍基地が報復攻撃に遭い、壊滅的なダメージを受けることを米国は理解している。

 他にも圧力をかける方法は当然ある。米国などの関係国はこれまで、中国が石油禁輸措置を取れば北朝鮮をすぐに屈服させられると提案してきた。今回の核実験に対して中国は通常よりも強い言葉で反応した。核実験による地震は中国でも確認されたと伝えられていることに加え、中国の習近平国家主席が現在重要な国際首脳会議を主催していることもあり、中国政府が憤り、警戒する理由は十分にある。

 それでも、中国の根本的な打算が変わることはなさそうだ。中国政府は思慮深く戦略的な理由から、北朝鮮の体制を崩壊させるような行動は避けたいとの思惑が見て取れる。北朝鮮が無秩序に崩壊し、中国国境付近で戦争になったり、難民が押し寄せて手に負えなくなるなどのリスクや影響を恐れているのだ。これらを抑制できたとしても、朝鮮半島が統一され、新たにできた国が米国の同盟国になることを中国は望んでいない。

 世界の主要国がいら立ち、何もできないままでいるのに、北朝鮮の脅威は増大し続けている。国際社会の陰で何年も問題を起こしてきた同国は今、他国を押し分けて国際問題の最前線に躍り出た。この危機の何らかの最終局面はすぐそこまで迫っているのかもしれない。しかし、このドラマの主役たちでさえ、この危機の先にあるのが交渉か、あるいは戦争なのかまだ分からないでいる。

By Gideon Rachman
(2017年9月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/

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