「合格」の柏崎刈羽原発に潜入! 構内の至る所に足場 安全対策工事に追われる作業員

「合格」の柏崎刈羽原発に潜入! 構内の至る所に足場 安全対策工事に追われる作業員

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柏崎刈羽原発7号機の原子炉格納容器内。中央の円筒形の設備は圧力容器の一部=9月26日

 原子力規制委員会が4日、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機が新規制基準に適合したとする審査書案を了承し、事実上の「合格」とした。次の焦点は再稼働をめぐる地元の同意に移る。ただ、条件付きで容認する立地自治体の柏崎市や前向きな刈羽村と異なり、新潟県米山隆一知事は3~4年を要する福島第1原発事故に関する県の検証が終わらないかぎり議論できないとの立場を堅持し、当分は「凍結状態」が続く。安全審査の申請から丸4年。全7基、総出力821万2千キロワットと世界最大級の規模を誇る同原発に、東電が事故の教訓をどう生かし、安全対策を進めてきたのか。現地で確かめた。(松崎翼)
海抜15メートルの防潮堤
 同原発には年間約3万人が見学に訪れる。原発の構内には、ガイドツアーに参加した市民らが乗る大型バスも行き交う。もっとも、構内には一般の工場見学のように気軽には入れない。敷地の入り口で警備員が車内に乗り込み、危険物がないかなどを入念にチェックする。東電の社員が運転する車両も例外ではなく、同様の検査を受ける。自然と緊張感が高まった。

 入構後、まず案内されたのは海岸沿いにそびえ立つ鉄筋コンクリート造りの巨大な防潮堤。東日本大震災後に整備され、福島第1原発を襲った津波と同じ海抜15メートルの高さがある。セメントと土を混ぜて強化した改良土を使った防潮堤と合わせ、計2・5キロにわたって1~7号機の建屋を守っている。ただ、地中深くの層の液状化対策は十分ではなく、対策を検討中という。
 2万トンの淡水をためられる高台の貯水池の周辺では、同原発保有する消防車を使い、作業員らが個別の訓練に取り組んでいた。発電所全体で行う総合訓練に加え、延べ1万7千回以上の個別訓練をこれまで重ねてきたという。
 いざというときに備え、約420万平方メートルの広大な敷地には42台の消防車が分散して配備され、100メートル先まで注水できる能力を持つ放水砲も控える。
活気ある建屋内
 7号機の建屋に入った。建屋内では、とぎれることなく作業員らとすれ違う。重苦しい空気はなく、思っていた以上の活気に驚いた。9月1日時点で構内には870社・約6600人が安全対策工事などに従事する。作業員らの約6割は地元在住者で、雇用確保に一定の役割を果たし続けていることは間違いない。

 一方、原発の稼働中にメンテナンスなどを担当する熟練作業員の仕事は消え、中には転職して地元を離れてしまったケースも少なくないという。再稼働に向け、一定以上の技術力を持つ作業員をいかに確保できるかも、東電が抱える大きな課題の一つだ。
安全対策に終わりなし
 同原発を訪れたのは、規制委が事実上の合格を出す前だった9月26日。構内では至る所に作業用の足場が組まれ、さまざまな安全対策工事に作業員たちが慌ただしく追われていた。
 「規制委の審査はこれからも続くので『合格』はそれほど意識していない」と東電の広報担当者。「震災以前は安全に対する思考が止まっていたと思う。安全対策に終わりはなく、将来にわたって継続的に取り組み続けることが、福島第1原発事故で得た最も大きな教訓」と語った。