月の地下に巨大な空洞発見 月面基地として活用の可能性も

月の地下に巨大な空洞発見 月面基地として活用の可能性も

将来の有人探査の構想が発表されている月の地下に、全長50キロにおよぶ巨大な空洞のあることが、日本の月探査衛星「かぐや」の観測データでわかりました。月表面の激しい温度差や放射線の影響を受けにくいことから、JAXA宇宙航空研究開発機構では、月面基地として活用できる可能性があるとしています。
これは、10年前の2007年に打ち上げられおよそ1年半にわたってレーダーで月内部の様子を調べた、日本の月探査衛星「かぐや」のデータを詳しく分析した結果、わかったものです。

JAXA宇宙航空研究開発機構などのチームによりますと、巨大な空洞は、火山が多く存在していた「マリウス丘」と呼ばれる場所に存在し、月の地下をはうように横におよそ50キロ続いているということです。

空洞は、直径50メートルほどの縦穴で月面とつながっていると見られ、内部は300度ほどあるとされる月の昼と夜の温度差や、宇宙から降り注ぐ放射線の影響を受けにくいほか、水を含む鉱物が残されている可能性もあるということです。

月の探査をめぐっては、今月、アメリカが宇宙飛行士を再び送る計画を発表するとともに、火星などへの有人探査に向けた拠点を月に築く方針を明らかにしています。

また日本でも、2025年以降に日本人宇宙飛行士を月面に送る計画が提案され、今後、議論されることになっていて、JAXAでは将来、月面基地として利用できる可能性があるとしています。

JAXA宇宙科学研究所の春山純一助教は「過酷な月表面の環境を人間が生き抜くのは厳しいと考えていたが、地下の空洞の存在はアポロ計画以来、行けていない月に改めて人間が進んでいける可能性を示している」と話しています。

月探査衛星「かぐや」

日本の月探査衛星「かぐや」のプロジェクトは、NASAアメリカ航空宇宙局アポロ計画以来、最大規模の月探査として注目を集めました。

「かぐや」は、10年前の2007年9月にH2Aロケット13号機で打ち上げられ、およそ1年半にわたり、レーダーなどを使って月の表面や内部の様子の観測を続けました。

打ち上げから1年9か月後の2009年6月に月面に落下し、任務を終えましたが、「かぐや」が観測した膨大なデータの分析はいまも続けられています。

これらのデータをもとに、これまでにも月全体の正確な地形図を作成したり、月の表側と裏側で重力分布が違うことなど、月の成り立ちの解明につながる成果が発表されています。

宇宙での活動は月や深宇宙へ

現在、宇宙空間での人の活動は、アメリカや日本それにヨーロッパなどが共同で運用するISS=国際宇宙ステーションを主な舞台に行われています。しかし、国際宇宙ステーションの運用は7年後の2024年までとされ、その後の運用方針は決まっていません。

こうした中、次なる有人宇宙活動の場として、月面や、さらに遠い火星など「深宇宙」=ディープスペースと呼ばれる宇宙空間を目指す動きが出ています。

このうち、アメリカは今月、ペンス副大統領が宇宙飛行士を再び月に送る計画を発表するとともに、火星などへの有人探査に向けた拠点を月に築く方針を明らかにしました。
また、NASAアメリカ航空宇宙局も、月や火星に向かう拠点として、月の近くを周回する宇宙ステーションを2020年代後半に完成させる構想を発表していて、先月、ロシアの宇宙開発公社と宇宙ステーションを共同で開発していくことを表明しています。

一方、ヨーロッパの欧州宇宙機関は、月面の土を使って人が滞在できる基地を作る構想を提案しています。

このほか、中国やロシアなども有人の月面探査を検討しています。

また日本は、ことし6月に、JAXAが2025年以降、日本人宇宙飛行士を月に送る計画を提案し、今後議論されることになっています。

有人の月面探査は、アメリカが1969年から72年にかけてアポロ計画で行って以降、40年以上行われてきませんでしたが、ディープスペースなどを目指す各国の動きの中で再び注目を集めています。