警察が「チャリテロ」と呼ぶ、自転車を使った当たり屋への対策

警察が「チャリテロ」と呼ぶ、自転車を使った当たり屋への対策

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メルマガ『ジャンクハンター吉田の疑問だらけの道路交通法』の著者で交通ジャーナリストの吉田武さんが、現役の警察官であるTさんへのインタビューで「自転車の取り締まり」に関する裏話を暴露する当シリーズ。今回は、警察官の隠語で「チャリテロ」と呼ばれる、モラルのない自転車乗りが起こす接触事故の実情を明らかにしています。お二人が考える、不意のチャリテロに対抗できる最強の手段とは?

軽車両の自転車はどこまで車両や歩行者と共存できるのか? その14

吉田:以前、巡査の方々と愚痴り大会含めた飲み会に参加したんですけども、自転車を運転する人のモラル低さは道路交通法改正しても絶対変わらないよって嘆いていたんです。その際に皆さんが”チャリテロ”って言ってたんですが、まさに自転車に乗って歩行者以外と接触したとしたらまさにテロですよね。
Tさん:よその署の方々はチャリテロって呼んでいるんですか。凄い隠語ですねぇ。ある意味で正しい使い方かもしれませんが……私もチャリテロって使わせて頂きます(苦笑)。私も愚痴り大会な飲み会に参加したいので声かけてくださいよ!
吉田:ヤバい話しか出てこないのでもしかしたらドン引きするかもしれませんけどお声かけますね(笑)。
そのチャリテロ認定する事案というのは、弱者救済措置に関してなんですけども、自転車vsクルマな話が多く、ほぼチャリテロは当たり屋であると全員一致した回答に。タチの悪いエピソードを色々伺ったんですが、仕事がなくて治療費やら慰謝料やらで生活保護みたいな感覚で生計立てようと自転車でクルマに接触する輩が結構いるそうなんです。まさに定められた過失割合を悪用してのチャリテロ。走っているクルマの前に飛び出して接触しても自転車の過失割合はどういうわけか3割で、クルマが7割とおかしな過失割合になることを利用しているそうなんですね。自転車で飛び出した側の加害者でも国が定めた過失割合に守られていることを徹底して悪用する事案なんですが、クルマのほうが自転車よりも強くて大きい弱者救済措置を逆手に取った邪悪なやり方は、巡査の方々みんな、八方塞がりだと言ってました。
Tさん:で、そんな事案に対するテロ対策はあるんですか?

吉田:チャリテロに対するテロ対策は1つしかないです。ドライブレコーダーを全車両に装着することです。
Tさん:でも……クルマなら問題ないと思いますがバイクにも……ですか?
吉田はい。バイクにもドライブレコーダーを装着しているライダーは増えてきています。まぁ、正確にはドライブレコーダーではなくて、クリップオンが可能な1,000円~3,000円程度で売られている小型のビデオカメラなんですけどね。バイクを始動させるたびにバイクのスクリーン箇所や、ハンドル箇所などに自分自身で取り付けて運転するという感じなんです。
Tさん:なるほど。USB給電で動かせるタイプの小型ビデオカメラは今ですと沢山の種類が売られてますからね。皆さん賢いですね。このタイプでしたら取り外しも簡単ですし、バイクを動かす時に装着すればいいだけですから何かのためにも1個所有していてもいいかもしれません。
吉田ドライブレコーダーさえあればチャリテロしてくる自転車に勝てる可能性が生まれるんですね。飛び出してきた自転車に接触してもクルマやバイク側がどんなに安全運転していても過失の割合が高くなってしまい加害者扱いになります。日本の法律が狂っていておかしいことは十分承知の上ですが、しかし、ドライブレコーダーでその接触状況さえ録画できていれば、裁判まで持っていった場合に過失割合が大きく変わったりして逆転劇が生まれる可能性が高いんです。
Tさん:そういえば最近は交通事故で揉めた場合、裁判まで行くとドライブレコーダーが証拠の要になると弁護士に伺ったことがあります。こういうケースですと水掛け論に発展してしまい、飛び出してきた自転車側は少しでも過失割合を減らすた
め、自分自身を守る供述をしますよね。つまり、真実を語らないわけですが、そこでドライブレコーダーの映像を裁判長が見て判断する事案が増えてきているそうですよ。
吉田:Tさんが知っている範囲でいいんですけども、ドライブレコーダーが活躍して解決に至った事故事案というのはありますか?
Tさん:そんなに多くないですけど1つだけあります。水掛け論になってしまい、物損事故から途中で人身事故へ切り替えて解決まで3年ぐらいかかったクルマと自転車の接触事故がとても印象的でしたね。具体的に説明しますと、主要幹線道路にクルマが停車していて、自転車が車道を走っていたところ、そのクルマを右側へ避けて走行車線へはみ出した瞬間にワゴン車と接触
吉田:今でも良くある接触事故のパターンですね。
Tさん:まず自転車側がワゴン車の運転手に対して被害者目線で自分自身の自転車の後ろへ追突されたことを訴えましたワゴン車の運転手は目視で後ろを確認せずにこちらが走っている車線へ停車しているクルマを避けながらはみ出してきた」と供述しました。自転車側からはさらに「こんなところに止まっているクルマが一番いけない」と事故の責任を停車中のクルマへもなすりつけます。ただし、停車中のクルマは駐車禁止場所ではありますが、停車禁止の場所ではなかったのでこれではただの巻き添え事故みたいになってしまいます。果たして誰が一番いけないでしょうか? 吉田さんならスグお分かりになると思いますが(笑)。

吉田:当然、自転車に乗っているサイクリストですよ。何が原因かというと、停車中のクルマを避けて車線へはみ出す際に後続車が来ているかいないかの確認を目視しなかったからだと思います。ですので停車中のクルマには一切責任はないです。ぶつけてしまったワゴン車の方はチャリテロに遭遇してしまった不運ですが、自転車が走っていることを確認できているはずですので、ある程度の予測運転をするべきだったかと思います。まぁ、こういう予測運転しろというのも酷な話ですが、
そんなことを考えながら運転していたらそれこそ全国の道路は大渋滞して法定速度以下のノロノロ運転だらけで大変なことになりますから、矛盾してますけどね(苦笑)。
Tさん:さすが完璧な回答です。チャリテロで多い事故事案は一時停止無視での飛び出し以外ではこのような車線はみ出しでの接触事故が地域によって多くなってきているんです。自転車は車道を走ることが常識的になってきたことからなんですが、これもある意味で飛び出しの事故と似ているんですけどね。