なぜ貴乃花親方は沈黙を続けるのか? その理由とは…
なぜ貴乃花親方は沈黙を続けるのか? その理由とは…
大相撲の横綱日馬富士関(33)による暴行問題で被害者の平幕貴ノ岩関(27)以上に注目を集めているのが、師匠にあたる貴乃花親方(元横綱、45)だ。暴行について、鳥取県警へ被害届を提出しながら日本相撲協会には報告せず、日馬富士関側に対して民事訴訟などの法的手段を検討する意向があるともされる。漏れ伝わってくるのは関係者からの情報ばかりで、本人はほとんど口を開かない。現役時代に「平成の大横綱」として22度の優勝を重ねたスターはなぜ沈黙を続けるのか。
しかし、貴乃花親方は17日に報道陣から「警察の捜査に任せるのか」と聞かれ「そう、そう、そう」と口にした程度。表情を変えることすらなく、以降、11月26日の九州場所千秋楽まで言葉を発することはなかった。
九州場所後もテレビカメラが一挙手一投足を追いかけ、帰京の様子や外出の様子などを徹底的に追っているが、何も語っていないのが実情だ。
暴行問題は10月下旬に起こった。巡業部長を務める貴乃花親方は10月29日に鳥取県警へ被害届を提出していた。11月2日に県警から連絡を受けて、協会は事態を把握した。しかし、3日に鏡山危機管理部長(元関脇多賀竜、59)が電話で貴乃花親方に事情を聴いたところ「(詳細は)わからない」という旨の返答だったという。
一部報道で暴行が明らかになった14日に協会の聴取を受けると、「(貴ノ岩は日馬富士に)ビール瓶で殴られた。相撲を取れる状態ではない」と話して、第三者を立てて日馬富士関に対し民事訴訟を起こす意向を示唆したともされた。
さらに、九州場所初日から休場する根拠として13日に公表された診断書に疑義も生じた。
「脳振とう、左前頭部裂傷、右外耳道炎、右中頭蓋底骨折、髄液漏の疑いで全治2週間程度と考えられる」との内容だったが、協会が診断した医師に確認したところ、全治2週間は受傷した10月26日からの期間で、九州場所前の11月9日時点で相撲を取ることに支障がない、と判断していることが明らかになった。
なぜ休場させたのだろうか-という新たな疑問が生じた。
真相解明に被害者である貴ノ岩関に話を聞くことは欠かせないとして、八角理事長(元横綱北勝海、54)が22日に役員室に貴乃花親方を呼び出して協力要請をしたが、貴乃花親方は「お断りします」と拒否した。貴ノ岩関の体調不良などが理由という。当事者の一方から聴き取りのめどが立たない状況となっている。
理事長選後の職務分掌では総合企画部長から外され、巡業部長に就任した。要職ではあるが、協会常勤の執行部ではなくなったとも言える。同じ巡業部には貴乃花一門や支持する親方が数多く配置された。
1年ほど前からは伊勢ケ浜親方との関係もこじれたとされる。来年の選挙で伊勢ケ浜親方の枠を狙って、貴乃花陣営は新たな立候補者を擁立し、勢力拡大を図っているとの臆測まである。
複数の関係者によると、貴乃花親方は執行部に役員室に呼び出され、調査への協力を何度依頼されても時に声を荒らげながら、全く応じる気配がなかったという。
北村正任委員長(毎日新聞社名誉顧問)は横審の関わる問題ではないとした上で「理事という立場であって、協会全体が進めることをぶち壊すような動きをしているのではないかという疑念、不可解だという意見がほとんど。親方の意思と関取本人(貴ノ岩関)の意思が本当に一致しているのだろうか。親方が力士一人の先行きを決めちゃっていいのだろうか。相撲界の伝統で、親方と弟子の関係はあるんだろうが、そういうことでいいんだろうかという疑問も出た」と明かした。
今回の問題で被害者が貴ノ岩関であることは間違いない。貴乃花親方には弟子を第一に思う気持ちがあるはず。ただ、貴ノ岩関、貴乃花親方も相撲協会員である。県警の捜査を優先させた上で外部の有識者も入っている相撲協会危機管理委の調査に応じることに支障はあるのだろうか。
言葉を発しないことで、被害者側の真意は全く見えてこない。このまま“謎”ばかりが深まっている。