NHK、最高裁判決を受信料徴収の「錦の御旗にしない」「公平負担の徹底に努めたい」

NHK、最高裁判決を受信料徴収の「錦の御旗にしない」「公平負担の徹底に努めたい」 上田良一会長会見詳報

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NHKの上田良一会長(伴龍二撮影)

 NHKの上田良一会長は7日、定例会見で、受信料制度を合憲とした最高裁大法廷判決について「公共放送の意義を認めたもので、受信料制度を視聴者に丁寧に説明し、公平負担の徹底に努めたい」と述べた。会見における判決に関する上田会長らの一問一答は次の通り。
 --判決をどう受け止めたか
 「判決は民放との二元体制に言及したうえでNHKについて、放送法は、特定の個人、団体、または国家機関などから財政面での支配・影響が及ばぬよう、財源を受信料で賄うことにした、と述べている」
 「受信料制度という仕組みは、憲法の保証する表現の自由の下、国民の知る権利を満たすために採用された制度で、その目的にかなう合理的なものと解釈される、との考えを示した」
 「判決は、最高裁が公共放送の意義を認め、受信料制度が合憲である、という判断を示したもので、(NHKは)引き続き、受信料制度の意義を視聴者に丁寧に説明し、公平負担の徹底に努める。また公共放送の基本姿勢を堅持し、放送法を順守しながら、自主自立を貫いていく」
 --改めて「公共放送」の意義をどう考えるか
 「公共放送の意義をどう考えるかについては、NHKは(1)正確で公平公正な情報を提供すること(2)安全で安心な暮らしに貢献すること(3)質の高い文化を創造すること-などの、公共的価値を実現することを追求してきた」

「これからも公共的価値のさらなる実現の向上を目指し、放送と通信の融合時代に、いつでも、どこでも視聴者の期待に応えられる情報の社会的基盤としての役割を果たしたい」
 「引き続き、広く、“受信料によって支えられる公共放送”の基本姿勢を堅持し、放送法を順守しながら自主自立を貫く覚悟だ」
 --判決により、今後の受信料の契約・徴収業務の方針に変更はあるか
 「基本的には、『従来のやり方』を認めていただいた、という理解。受信料制度の意義を丁寧に視聴者に説明し、公平負担の徹底に務めるのが非常に大事なこと。そのあたりは従来同様、さらに努力していきたい」
 --判決は「消滅時効」に言及。さかのぼっての請求が可能だ。判決は、徴収の後押しになるのか
 (営業局担当)「これまでどおりの営業活動をやっていく。判決がどういう影響を及ぼすか、現時点での予測は難しい。引き続き、支払い率の向上、公平負担の徹底に最大限、努めたい。丁寧に説明し、ご理解いただいたうえで契約をいただく活動に今後も変わりはない」
 --契約に応じ、未支払い分があれば、過去にさかのぼって支払わなくてはならないのか
 (営業局長)「受信契約締結に当たっては、受信できる放送の種別や、(テレビを)設置した日などをお客さまから確認して手続きする。したがって、『20年前から設置している』と申告があれば、公平負担の観点からも(20年前にさかのぼって)ご契約をいただくことになる。あくまで、基本的には、設置の日はお客さまに確認して締結する。丁寧に説明して理解を求める営業活動をする」

 --受信料の徴収で、これまでトラブルがなかった、とは言いがたい。今回の判決で、強引、高圧的な徴収が行われるとも考えられる。それが起きないようにするための対策は
 「基本的には現場で対応している。いろんな不祥事や問題が発生しているので、最前線で視聴者とコンタクトを取っている人は、たとえ委託先であっても、NHKが本来的に果たしている役割をしっかり説明し、ご理解をいただく。その教育や指導は、プログラムを作って対応している。これまで残念ながら徹底できていなかった部分があることは否めないが、その方向で努力していることは事実」
 (営業局長)「お客さまからのクレームやトラブルがゼロというまでにはなかなか行かないが、営業の目標と同じように減らしていく。訪問活動を契機としたお客さまの声の件数もすべて理事会や経営委員会に報告して減らすように努めている。教育研修指導、職員が帯同して歩くことを含めて、いろんな教育活動をやっている」
 (営業局長)「今回、最高裁の判決が出たが、すでに昨日の段階で、全ての訪問員に対し、基本的には丁寧な説明を必ずすること。“錦の御旗”のようなものを掲げて説明がおろそかにならないよう、文書を出して徹底を図っている。営業部門としては最もなくさないといけない問題と考え、最大限努力しているところだ」
 --訴訟を起こしてもNHKは負けない、という判決になった。これまでより訴訟を多く起こすことはありうるか

 「公共放送としての役割を認識していただいたうえで、それに対して、受信料という、特殊な負担金をお願いしている。公共放送の役割を果たしている、という視聴者の信頼がない限り、単に訴訟だけを持って受信料をちょうだいする、ということは考えていない」
 「判決でもNHKからの一方的な申し込みで受信料が発生するものではなく、(視聴者と)双方の意思表示の合致が必要、という指摘もされている。繰り返すが、これまで通り、公共放送の役割や受信料制度の意義を丁寧に説明する姿勢に変わりはない」
 --訴訟を起こすとNHK側もかなりの労力になる。任意で契約を促すような方策などの検討の余地は
 「昨日判決が出たばかりで、その判決に基づいてどうNHKとして対応するのか。NHKの裁量で許されるものと、NHKの裁量だけでは対応できないものも当然出てくる。そういうことも含めて少し検討しないとならない。私のほうからはっきりした形での回答は差し控えたい」
 --「公共性」を視聴者に説明する責任が、より大きくなった。中期経営計画に盛り込む公共性のイメージを具体的に説明してほしい
 「公共的価値を、はっきりとみんなが答えられるような言葉を詰めているところだ。次の経営計画の中で明確に打ち出したい。そして、その意味するところを、きちんと解説していきたい」
 --受信料支払い率の向上策として、9月に「NHK受信料制度等検討委員会」から答申を受けた、公益事業者から提供される居住者情報の利活用について現在どうなっているのか

 (営業局長)「公平負担の徹底と営業経費の抑制を図るため、諸外国の公共放送の取り組み事例を踏まえ、適切な制度の整備のあり方について答申いただいたもので、今回の最高裁の判決を踏まえたものではない。今後、判決内容も踏まえた上でNHKとしての考え方をまとめていくことになる」
 --答申内容は、プライバシーの問題も含んでいるが、導入に前向きなのか
 「慎重な検討が必要だ。法改正が必要な部分もあるので、われわれだけで簡単にできない。検討を加えて判断したい。(時期は)特にいつまでとは想定していない」
 --「公共放送から公共メディアへ」を掲げる中で、最高裁の判決にインターネットに関する言及がなかったが
 「インターネットを通じて情報があふれる中、民主主義の発達に欠かせない情報の社会的基盤は公共放送が積極的に担うべき、極めて重要な機能だと感じている。NHKは公共放送として取り組むテレビやラジオの放送を太い幹としつつ、放送だけでなくインターネットも適切に活用することで、公共メディアとして情報の社会的基盤であり続けたいと考えている」
 「判決の中でも言及されていたが、民放との二元体制の中で、インターネットも活用して、健全な民主主義の発展に貢献し、文化水準の向上に寄与したい」
 「そういった環境変化も踏まえながら、私どもだけでは決められないが、インターネットに対して、どういう形で適正な負担をいただけばいいのか、なども含めて、時間をかけて検討するのが課題だと考えている」