有名シエフが教えます。あっと驚く卵焼き(scrambled egg)

Daniel Pattersons Poached Omelet
Daniel Patterson
スクランブルエッグを作るのに必要なのは、調味料を除けば油と卵だけ。ここに何か食材を加えたり、盛り付けを美しくしたりする方法はたくさんあるが、卵を割り、かき混ぜ、フライパンで仕上げるという3段階のプロセスを変更するのは考えがたいように思われる。
  
ダニエル・パターソン氏
Maren Caruso
  しかし、サンフランシスコのシェフ、ダニエル・パターソン氏は別の方法を編み出した。料理界のアカデミー賞とも呼ばれるジェームズ・ビアード賞受賞歴がある同氏のレストラン「コイ」はミシュランの星付き。同氏はまた、貧困地域で安くておいしいバーガーやコーヒーを提供するという社会的使命を帯びたファストフード店「ローコル」の共同創業者でもある。
 
  パターソン氏はさらに、今月発売されたばかりの著書「The Art of Flavor (アート・オブ・フレーバー)」で、調理の際にはレシピに頼らず自分なりの味つけに自信を持つよう読者に呼び掛けている。
  目標はレシピなき料理を家庭に普及させることだ。パターソン氏は「シェフは料理を創造する際、さまざまな決定を同時に下す。この本を読めば、自分だけのレシピをつくり出せる。その大半は基本的なことだ。酸味がほしいと分かれば、シャンパンビネガーかバルサミコ酢かかんきつ類を使うかを決める。甘味が欲しければ、ブラウンシュガーにするか、蜂蜜かジュースか。どれが自分の料理に合うかが分かれば、自信がつく」と話した。
  理解を深めてもらうため、パターソン氏は味つけに失敗した際の挽回方法にページを割き、調味のパワーを示している。具体的には最終章で甘味、酸味、塩味、苦味、うま味に油と加熱を加えた7種類の要素を挙げ、例えば塩を入れすぎた場合は砂糖を加えることで緩和したり、バターなどの油分が味のバランスを整えてくれると説く。
自分なりの味つけを見つけようとパターソン氏は呼び掛ける
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  同氏自身が自分なりにいろいろ試した結果、これまでにないスクランブルエッグのレシピを開拓できた。パターソン氏はいつも、フッ素樹脂加工のフライパンでスクランブルエッグを作っていたのだが、環境意識の高い妻が化学物質の問題を気にしたため、鉄のフライパンで調理したところ、洗い物が面倒なことに気が付いた。そこで、ひらめいた。煮たったお湯の中に卵を入れてみたらどうかと。ポーチドエッグならぬ、溶き卵を使った落とし卵だ。
  お湯をよくかき回して渦をつくれば、鍋底に卵がくっつかないことも分かった。また、煮立ったお湯からの気泡で溶き卵は膨らみ、タンパク質が固まる。すると、完璧なオムレツのようにふわふわの軽くて柔らかいスクランブルエッグが出来上がった。トッピングの選択肢は、オリーブオイルやヤギ乳チーズ、グレービーなど多数。バターを載せ、それが溶けていく感じもいい。
単純を極めるレシピ
Daniel Patterson
  以下がパターソン氏のスクランブルエッグの作り方だ。
材料(2人分)
  • できるだけ新鮮な卵4つ
  • 塩と挽きたてコショウ
  • 無塩バター
  ボウルの中で約30秒ほど、卵をよくかき混ぜる。中程度の鍋に10センチ以上の深さで水を張り、中火で静かに沸騰させる。塩を数つまみ加え、お湯をかき混ぜて渦ができたら、溶いた卵を落とす。ふたをして20数えると、卵がリボン状になって表面に浮かんでくるので、静かにざるに上げて水気をよく切る。皿に盛り、塩コショウして、バターを載せ、トーストを添えて召し上がれ。
スクランブルエッグの出来上がり
Daniel Patterson