「石油の次」知恵比べ 次世代へ種まき(革新力)

「石油の次」知恵比べ 次世代へ種まき(革新力)
2018年の焦点(3)

 20世紀の世界経済を支えた石油産業が岐路に立たされている。世界の主要国や大手自動車メーカーが電気自動車(EV)にカジを大きく切り、ガソリン需要が減る未来図がみえてきたためだ。日本勢を含むエネルギー産業で「石油の次」への知恵比べが始まった。
 2030年に世界の石油需要はピークを迎え、その後は減少に転じる――。日本エネルギー経済研究所は17年秋、EVなどゼロエミッション車(ZEV)の普及を前提として、こんな石油需要の長期予測をまとめた。石油製品の3割を占めるガソリンの需要が大きく落ち込むためだ。
 「パリ協定」が16年に発効するなど世界が地球温暖化防止に動き、石油にはかつてない逆風が吹きつつある。英仏は17年7月、40年までにガソリン・ディーゼル車の販売をやめると表明した。ドイツは発電量の3割を占める太陽光など、再生可能エネルギーの比率を50年に8割にする計画を掲げる。
 17年には、中東で新たな地政学リスクも浮上した。世界最大の産油国サウジアラビアは、世界最大の液化天然ガス(LNG)輸出国であるカタールと断交した。トランプ米大統領エルサレムイスラエルの首都と認定したことも原油相場を不安定にした。
関連インタビュー

JXTGホールディングス社長 内田幸雄氏

「EVもFCVも克服すべき課題がある。石油は化学品などで成長続く」

ユーグレナ社長 出雲充氏

「世界の燃料ビジネスで今後50年は戦える」
 日本の石油需要は世界に先駆けて減少期に入っている。18年度の燃料油販売量は6年連続で減少した。50年ほど前の水準に落ち込む見通しで、これから減少傾向が変わることは考えられない。
 とはいえ、石油も航空・船舶燃料や化学品の原料として、一定の需要が残るのも事実だ。用途が絞られていくなかで、どこに力点を置くかが関連企業の明暗を分ける時代が来る。
 JXTGホールディングスは化学用途の開拓や水素ステーションの整備など、次世代ビジネスの種まきを急ぐ。航空機用バイオ燃料のプラントを建設するユーグレナは、燃料精製など日本の石油産業が培った技術が生きると指摘する。
 「エネルギーは日本が世界で優位に立てる産業だ」(ユーグレナの出雲充社長)との見立ては正しいのか。日本勢の知恵が問われる。
(榊原健、指宿伸一郎)