H2A、18年度からは「受注の谷」 コスト抑制に課題

H2A、18年度からは「受注の谷」 コスト抑制に課題

 国産の大型ロケット「H2A」38号機が27日午後1時34分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。政府の情報収集衛星を予定の軌道に投入し、2017年度を締めくくる5機目の打ち上げは成功した。国際的な衛星の獲得競争で生き残るために求められる「年間10機」への通過点ともいえるが、18年度からは「受注の谷」が待ち受けている。
打ち上げられるH2Aロケット38号機(27日、種子島宇宙センター
 三菱重工業宇宙航空研究開発機構JAXA)はこの1年、ほぼ2カ月間隔でH2Aを打ち上げてきた。3月の33号機では製造から輸送、据え付けまでの工程一つ一つを見直し、その前の打ち上げとの間隔を1日短縮して52日とした。
 「30日間で2機を打ち上げるのが理想」と三菱重工の打ち上げ執行責任者、二村幸基氏(執行役員フェロー)。世界の衛星の争奪戦を制するには、97%超で安定する確実性(成功率)だけでは足りない。固定費を限界まで下げるためにも、打ち上げ間隔は短いほど望ましい。
 単年度で5機という17年度の打ち上げ回数は、過去最多タイ。だがせっかく確立した手法が18年度、19年度は宝の持ち腐れになる可能性が高い。内閣府が昨年12月に改定した宇宙基本計画の工程表によると、18年度、19年度に打ち上げを予定する政府衛星はそれぞれ3基程度にとどまる。
 「ならば」と三菱重工は、商業衛星で打ち上げ回数の確保を目指したが、受注できた衛星の打ち上げはいずれも20年度以降だ。
 政府衛星と異なり、自由競争の商業衛星は高い稼ぎを見込めない。それでも商業衛星受注を目指すのは、打ち上げ回数を確保するためだ。20年度に投入する新型ロケット「H3」は全体コストをH2Aの半分の50億円程度に下げるのが目標だが、これも一定程度の受注規模が前提となる。
 H3が登場する20年度以降は政府衛星も回復予定で、三菱重工関係者は「お客さん次第とはいえ、うまくいかない」とこぼす。受注から打ち上げまでには2~3年かかるのが相場。これから18年度、19年度をテコ入れするのは現実的ではなく、向こう2年の台所は苦しいやりくりを強いられそうだ。