在韓米国人の大規模退避訓練実施へ ボランティア参加者約100人を米本土まで移送

在韓米国人の大規模退避訓練実施へ ボランティア参加者約100人を米本土まで移送


 【ワシントン=黒瀬悦成】米軍準機関紙「スターズ・アンド・ストライプス」(23日付)は、米軍が4月1日から開始される米韓合同軍事演習に合わせて在韓米国人の大規模な国外退避訓練を行うと伝えた。米軍は毎年春と秋に米軍人の家族と軍属を対象に日本への退避訓練を行っているが、今回は初の試みとしてボランティアの参加者約100人を実際に米本土まで移送する。
 同紙によると、退避訓練は「フォーカスド・パッセージ」と名付けられ、北朝鮮との間で戦争が起きたという想定で、4月16~20日の日程で行われる。
 朝鮮半島情勢をめぐっては、南北首脳会談と米朝首脳会談が開かれる運びとなり、北朝鮮の核・弾道ミサイル問題を対話で解決する機運が浮上。しかし、米軍関係者らの間では逆に、会談が失敗した場合の「最悪の事態」に備えた対応を訴える声も広がっている。
 特に問題視されているのが、一般の米民間人も含めた総計二十数万人の在留米国人をどう退避させるかについて、米軍に具体的な計画が存在しないことだ。

 ハリス米太平洋軍司令官は2月14日、下院軍事委員会の公聴会で証言し、半島有事の際に増援兵力が韓国に送り込まれる状況下で、どうやって民間人を脱出させるのかについて聞かれ、退避計画見直しの必要性を認めた上で、ハワイ州の太平洋陸軍司令部で計画の改定作業が進められていることを明らかにした。また、韓国には米国人に加え約6万人の日本人と約100万人の中国人がいると指摘した。
 駐韓国大使への起用が取り沙汰されたビクター・チャ氏は米紙への寄稿で「北朝鮮からの砲弾やミサイルが降り注ぐ中で、これほど多数の市民を国外に脱出させるのは不可能だ」と悲観的な見通しを示した。