受精卵無断移植、2審は夫の同意判断せず 大阪高裁判決 法的関係無効求めた夫の控訴棄却

受精卵無断移植、2審は夫の同意判断せず 大阪高裁判決 法的関係無効求めた夫の控訴棄却


 凍結保存していた受精卵を別居中の妻が無断で移植し出産したとして、奈良県内の外国籍の男性(46)が生まれた長女(3)との間に法的な親子関係がないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決が26日、大阪高裁であった。江口とし子裁判長は、男性の訴えは別の形態の訴訟で争うべきだとして内容を判断せずに却下した1審奈良家裁判決を支持し、男性の控訴を退けた。
 一方、昨年12月の1審判決は、体外受精などの生殖補助医療では「夫が妻との間に子供をもうけることに同意していることが必要」と判断。しかし、高裁判決は、そもそもの訴えが却下されるため「同意が必要かどうかは判断の必要がない」とするにとどめた。
 判決などによると、男性と妻だった日本人女性(47)は平成21年から不妊治療を始め、奈良市の婦人科クリニックで体外受精で作った複数の受精卵を凍結保存した。受精卵の移植で23年に長男が生まれたが、25年に夫婦は別居。女性は26年に男性に無断で残る受精卵を移植し、27年4月に長女を出産した。夫婦は28年10月に離婚した。

 江口裁判長は判決理由で、「男性は別居中も長男の世話で妻の家を訪れるなどしており、明らかに夫婦の実態が失われていたとまではいえない」と指摘。1審と同様、妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する民法の「嫡出推定」の規定から、長女は男性の子と推定されると判断した。
 その上で、同意のないことで嫡出推定が否定されるかを検討。夫が外国に滞在していて妻と会う機会がなかった場合などに嫡出推定は否定される可能性があるが、内心の問題である同意の有無はそうした事例ほど重視すべきではないと判示した。