小惑星探査機「はやぶさ2」、いよいよ目的地の小惑星に到着へ

小惑星探査機「はやぶさ2」、いよいよ目的地の小惑星に到着へ

2018年4月23日(月)15時00分

小惑星探査機「はやぶさ2」の想像図 (C) JAXA/池下章裕
日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が、いよいよ目的地である小惑星リュウグウ」に到着する。
はやぶさ2」は2014年に打ち上げられ、約3年半にわたって、宇宙を順調に航行し続けてきた。リュウグウ到着を前に、運用チームは探査の準備や訓練を着々と進めている。

はやぶさ2」が探査に挑む小惑星リュウグウ

はやぶさ2」は、宇宙航空研究開発機構JAXA)が開発した小惑星探査機。幾多のトラブルを乗り越え、2010年に地球帰還を果たした「はやぶさ」の後継機にあたる。
はやぶさ2」が探査に挑む小惑星リュウグウは、太陽系ができた今からおよそ46億年前の痕跡を、当時のままの形で残していると考えられている。
はやぶさ2」の探査によって、太陽系や地球、そして海や生命の起源と進化に迫り、また先代「はやぶさ」の成果と合わせて、小惑星についてより深く知ることができると期待されている。
2014年12月に打ち上げられた「はやぶさ2」は、エンジンを噴射したり、地球の重力を利用して軌道を変えたりしながら、これまでのところ順調に航行を続けている。リュウグウへの到着は6月21日〜7月5日に予定されている。
リュウグウ到着後、「はやぶさ2」は約2か月かけて地表や重力を観測し、9月〜10月に着陸と、石や砂の採取に挑む。その後も約1年かけて、さらなる観測や石の採取、小型の探査ロボットの投下や運用などを行い、2019年の冬にリュウグウから出発。採取した石や砂とともに、2020年末に地球に帰還する予定となっている。
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リュウグウに着陸する小惑星探査機「はやぶさ2」の想像図 (C) JAXA/池下章裕

未知の小惑星にどうやって着陸するのか?

リュウグウ到着を目前に、運用チームは準備や訓練に余念がない。
じつはリュウグウがどんな姿かたちをしているのか、今の段階ではほとんどわかっていない。それがわかるのは「はやぶさ2」が実際にリュウグウに近づいたときで、運用チームはそこから、技術的、科学的に最適な着陸場所を決めなくてはならない。しかし、リュウグウに滞在できる期間は限られているので、なるべく早く決める必要もある。

さらに、リュウグウに着陸し、石や砂を採取する際には、運用は複雑になる上に、時間も限られている。また探査機との通信には20分のタイムラグが生じるので、探査機にトラブルが発生した際の対応も難しい。もし対応を誤れば探査機が壊れてしまうかもしれない。
そこで運用チームは昨年から、想定されるリュウグウの形状をもとに、着陸場所を決めたり、着陸や石や砂を採取などの運用をシミュレーションしたりといった訓練を繰り返し実施。運用に慣れるだけでなく、運用に使うソフトウェアを改良したり、さらになんらかの異常事態が発生したときにどう対応するかを確認したりといったことを行ってきた。
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はやぶさ2」のリュウグウ到着に向け、訓練を行う運用チーム (C) JAXA

「訓練の数をこなし、自信をつけてきている」

はやぶさ2」のプロジェクト・マネージャーを務める津田雄一氏は「リュウグウ到着まで7割ほどの運用が終わった。しかしここからが重要で、慎重に残りの3割を進めていきたい」と、決意を語った。
また、訓練については「数をこなし、自信をつけてきている。実際の運用でも想定外のことが起こりうるだろうが、訓練をこなしたことで対応できると思う」と自信を見せた。
訓練を担当するJAXAの佐伯孝尚氏によると、訓練の中では困難なこと、対応が間に合わなかったこともあったという。ただ、「良質な失敗の経験を積むことが、手順書の成熟と運用メンバーの自信につながっている」と、運用チームの成長に期待を寄せる。
いよいよ間近に迫った「はやぶさ2」のリュウグウ到着。しかし、これからが本番。訓練で味わったようなトラブルはもちろん、想定外の困難も待ち受けているかもしれない。だが、それを乗り越えた先に、人類がまだ見たことのない未知の世界が待っている。
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はやぶさ2」が2月に撮影したリュウグウ。今はまだ点でしかないが、これから徐々に鮮明になっていく (C) JAXA
小惑星探査機「はやぶさ2」の記者説明会