「私たちは用なしか」河野外相の外務省職員“改革”に戸惑いの声
「私たちは用なしか」河野外相の外務省職員“改革”に戸惑いの声
河野太郎外相(55)が外務省職員の業務効率化に乗り出している。外相の外国訪問ごとに作成してきた外相の日程や接遇をまとめた冊子を3月中旬の訪米時に廃止した。外相主催の国際会議の運用についても、今年度中に一部を民間委託するほか、会計業務も大幅に見直す意向だ。外交とは直接関係ない事務作業から職員を解放し、本業である外交に時間と人員を集中させる狙いだが、外務省職員の3分の1以上を占める一般職など事務作業を担う職員を中心に外相の“戦力外通告”に戸惑いが広がっている。(※4月13日にアップされた記事を再掲載しています)
「私たちは用なしということか」
「事務職として採用されたのに今更、外交をやれといわれても…」
例えば、外務省を担当する記者対応を担当する報道課所属の職員は現在、計29人いるが、その中で外交支援を主担務としているのは実質2人だけだ。あくまで単純な計算だが、外相の海外出張に伴う調整作業を担う職員の大半が効率化の対象ということになる。
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外務省は3月中旬の河野氏の訪米時から「ロジブック」と呼ばれる約30ページの冊子を廃止した。ロジブックは外相の訪問国での現地空港から海外要人との会談会場までの警備や接遇など、職員配置の詳細を記したもので、これまでは担当職員は残業して作成し、関係者全員が携帯できるよう印刷し、配布していた。
訪問先で外相の移動を円滑にするため、宿泊するホテルのエレベーターを外相が乗るタイミングに合わせて一時的に貸し切る「エレベーターブロック」もやめた。歴代の外相、外務副大臣の中には手厚い歓待を求める人がいたが、「河野外相は自分でエレベーターのボタンを押しても職員に文句は言わない」(大臣官房)という。特に河野氏の海外訪問はかつてないハイペースのため、調整作業は一層膨大になっており、本来外交を担当する総合・専門職の職員までが対応に追われていた。
日本で開く国際会議では、現在、会議に参加する国に赴任中の在外職員が一時的に日本に帰国し、要人の接遇などの業務を支援している。
特に昨年11月のトランプ米大統領来日など主要国首脳の来日の場合、本省職員だけでは人手が足らず、米国とは関係ない国の職員まで日本に一時帰国し、40日から50日間、調整に追われる。
要人の接遇など外交と直に関係ない業務を民間に委託すれば、在外職員の移動に伴う交通費や休日出勤を減らせるともくろむ。こうした外務省版「働き方改革」は、今年度中に日本で行う国際会議で試行後、来年に日本で開く20カ国・地域(G20)首脳会議の外相会合までに実現させる予定だ。
職員の外相同行に伴う会計処理も見直す。宿泊代の精算時に滞在したホテルのミニバーを使っていなくいても、未使用であることを示す証明書をわざわざホテルに発行してもらうなど、「人数の少ない在外公館は精算作業に終日費やしている」(関係者)。公私の区別を厳しく点検する会計検査院の検査に対応しているため、今後、検査方法の変更申し入れも含め抜本改革を進める考えだ。
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河野氏は1月9日、外務省職員に対する新年の訓示で「事務作業に追われるのではなく、作業を簡素化し、もっと外交をすることができる時間を増やしていくということを真剣に考えていかないと、日本の外交を前に進めるのは大変だ」と述べた。
河野氏が効率化を急ぐ背景には、限られた資金と人員を外交に注力しなければ、なり振り構わぬ経済支援で途上国に攻勢をかける中国に対抗できないという強い危機感がある。
外務省職員は本省(約2600人)と在外(約3500人)で計6100人いる。そのうち、キャリアと呼ばれる総合職は約900人いる。ノンキャリの専門職は約1700人、一般職約2100人。加えて、他省庁からの出向者や人事交流などの人員は後方支援が主な仕事だ。外相やキャリア職員の“黒子役”である多くの職員が、外交を支えているのも事実だ。