細田博之・自民党憲法改正推進本部長「9条改正発議へいろいろな妥協はあるかも…」
細田博之・自民党憲法改正推進本部長「9条改正発議へいろいろな妥協はあるかも…」
創設から63年以上がたつ自衛隊は、憲法9条の2項に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と書いてあるためにさまざまな議論が行われ、「自衛のための戦力は認められる」という解釈で合憲とされてきました。ただ、中学校の主たる公民教科書で7社中6社が自衛隊違憲論に触れていることから分かるように、今の憲法の条文では、自衛隊の本来の役割や存在について、まだ疑問を呈す人がいるのです。
「2項削除」切った
野党時代の平成24年にまとめた改憲草案は、9条2項を削除し、世界の国々並みの実力組織として国防軍を保持するという大改正案でした。成立させようと思ってつくったというより、今の憲法を全て書き換えるとどうなるかという観点で長い間議論したものです。実際は、国民の意識はこの草案まで来ておらず、このまま国民投票までいくのは難しい。国民の幅広い支持が得られるのか-といった議論もありました。
ありとあらゆる場合に備えることが大事だという純粋理念からすれば、自衛隊を今のまま認め、それ以上でも以下でもないと規定する首相案は不十分でしょう。
ただ、2項削除論は国民投票にかけるには先走り過ぎ、日本が戦争行為に巻き込まれるのでないかという議論が必ず起こる。ですから、党内で今年3月まで議論を重ね、そうした意見は取らないと決めたのです。
9条をめぐる自民党の議論は中途半端だとか、生煮えという人がいますが、そうではない。われわれは、当面の憲法改正は、2項を削除し、各国と同じような軍隊組織にする考え方は切ったわけですから、大きな誤解があります。
お任せ主義はダメ
自民党案に対し、公明党や維新の意見を聞かなければ、改正条文案は決まりません。その過程で、両党が修正案を出していただけるなら、議論を再び党に戻します。いろいろな妥協はあるかもしれません。合意しなければ、いつまでたっても国会で「3分の2」にならないわけですから。
改憲をめぐる全体的な議論では、「絶対反対」という党が反対のための議論をするでしょうね。国会では、一つ一つの政党と話し合い、理解を深めていかないとだめでしょう。その結果、3分の2をかなり超える国会議員が「この表現ならいいじゃないか」となれば、各党が意思決定をして共通の条文案の提出者になる。そういうイメージを持っています。
憲法は制定から70年以上がたちました。条文が現実に合わないと思われる場合には現実に即して改正し、その解釈は国会できちっと決める。それが本筋の立憲主義です。事実上、私学助成は今もしているのだから条文は変えなくていいとか、緊急事態は災害対策法制の運用で対応すればいいという「お任せ主義」的な議論はすべきではありません。
(原川貴郎)