米朝ユーフォリア崩壊で円高再来の現実味
[東京 22日] - 3月後半に104円台で底値を探っていたドル円相場はその後上昇に転じ、5月18日には111円台に乗せ、数カ月内に年初来高値113円をトライするとの予想すら出始めている。
2月の平昌冬季五輪以降、朝鮮半島では南北融和ムードが高まり、さらに米韓朝3カ国間での非核化に向けた動きが鮮明化してきた。実際この間、北朝鮮を複数回訪れ、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談したポンぺオ米国務長官(中央情報局=CIA前長官)の姿は、1970年代初頭に米中の電撃的な国交回復(ニクソン・ショック)をもたらしたキッシンジャー大統領補佐官(当時)を彷彿させるものだ。
もっとも、現実を冷静に見つめれば、朝鮮半島の非核化については、即時の核兵器廃棄とその査察を制裁解除の出発点とする米国と、非核化の段階的実施を約束することの見返りに早期の制裁緩和を取り付けたい北朝鮮との交渉スタンスの違いは明らかである。
実際、米朝ともここにきて、6月12日にシンガポールで予定される首脳会談を中止する可能性をほのめかすなど、雲行きが再び怪しくなってきた。「米朝ユーフォリア」に支えられてきた円安相場が、逆回転を始めるタイミングに差し掛かっているのかもしれない。
<リアルタイム政治ショーが相場狂わす時代>
ところで、このところの国際政治は一段と映像化が進み、政治ショーの様相を呈している。
韓国と北朝鮮の軍事境界線がある板門店で4月27日に行われた南北首脳会談では、両首脳の固い握手に始まり、散策、橋の上での会談、共同会見と見る者を飽きさせない演出が映像を通じて逐次、世界の隅々まで届けられた。このような為政者による政治ショーが、リアルタイムで投資家の目を曇らせる時代になったと言えよう。