世界の海洋プラスチック廃棄物の9割は、わずか10の河川から流れ込んでいる

世界の海洋プラスチック廃棄物の9割は、わずか10の河川から流れ込んでいる

7/12(木) 18:06配信

ニューズウィーク日本版
──その川とは……

プラスチック廃棄物が海洋に流出し、海洋生態系を脅かすようになって久しい。現在も、世界全体で1年間に800万トン規模のプラスチック廃棄物が海洋に流れ込んでいるとみられている。

川の地図、動画はこちら

それでは、これらのプラスチック廃棄物は、いったいどこから海洋に流れ込んでいるのだろうか。
ヘルムホルツ環境研究センター(UFZ)の研究プロジェクトによると、海洋に流出しているプラスチック廃棄物のおよそ9割が、わずか10の河川から流れ込んでいるという。

■ 10の河川とは…

その流出源として挙げられているのが、中国の長江、黄河、海河、珠江、中国とロシアとの国境付近を流れるアムール川、東南アジアを縦断するメコン川、インドのインダス川とガンジス・デルタ、アフリカ大陸東北部から地中海へと流れるナイル川、西アフリカのニジェール川で、いずれの流域も比較的人口の多い地域として知られている。

また、研究プロジェクトでは、プラスチック廃棄物の排出量とプラスチック廃棄物の不適切な処理との相関関係を分析し、流域で適正に処理されていない廃棄物が多いほど、河川から海に流出するプラスチック廃棄物の排出量が増えることを明らかにした。

研究プロジェクトを主導した水理地質学者のクリスチャン・シュミット博士は「これら主要な河川の流域からのプラスチック廃棄物の排出量を半減させるだけでも、海洋汚染の軽減に大きな効果をもたらす」と指摘。「そのためには、廃棄物の分別回収やリサイクルなど、廃棄物マネジメントの改善をはかるとともに、一般市民に向けた啓発活動を積極的に行うことが不可欠だ」と説いている。

■ 世界ではじまったプラスチック廃棄対策

いわずもがな、海洋に流出するプラスチック廃棄物の量を減らすことこそ、プラスチックによる海洋汚染の防止につながる最も有効な対策だ。

地球環境保護に先進的に取り組む米シアトル市では、2012年からプラスチック製レジ袋を禁じているほか、2018年7月1日、飲食店に対してプラスチック製のストローや容器、カップなどの消費者への提供を禁じる条例を定め、世界的な注目を集めた。

一方、欧州委員会では、EU加盟国に対して、プラスチック製レジ袋の消費量を2019年までに2010年比で80%削減するよう求めている。

また、新興国でも、同様の取り組みが始まっている。東アフリカのルワンダでは、すでに、レジ袋を禁じる法律が施行されている。

また、インドでは、2016年3月に「プラスチック廃棄物マネジメント法(PWM)」を定め、レジ袋の規格に制限を設けたほか、プラスチック廃棄物の回収・リサイクルの推進に国をあげて取り組んでいる。

プラスチック廃棄物の海洋流出をより効果的に食い止めるためには、この研究プロジェクトのように、プラスチック廃棄物の発生源や移動経路について科学的なアプローチからより詳しく解明していく必要もあるかもしれない。