「見たくない人は払わない」受信料義務化、NHKとかく戦えり
「見たくない人は払わない」受信料義務化、NHKとかく戦えり
小山和伸(神奈川大学経済学部教授)
第一に、NHKは公正な報道を定めた放送法4条に歴然と違反している。例えば加計学園問題をめぐる証言について、安倍政権に批判的な前川喜平前文科省事務次官の証言を長々と放送しながら、この前川証言を否定する加戸守行前愛媛県知事の証言はほとんど報道しなかった。報道番組の反日的な偏向姿勢は明らかである。
さらに、戦前戦中を扱ったドキュメンタリー番組での反日的な偏向ぶりはすさまじい。事実を極めて偏った観点から報道するほか、事実ではないことを事実として報道するなど、報道と言うよりもアジテーションというより他はない番組が、もはやNHK報道の常態となっているありさまである。
確かな一例として、以前にも紹介した1996年5月20日放送のNHK教育報道『51年目の戦争責任』がある。激しい抗議に懲りたのか、その後これほど露骨な事実捏造(ねつぞう)はしていないNHKだが、日本の公共放送たるNHKによる「日本軍による慰安婦強制連行の証拠が出てきた」との報道の影響力は大きい。
NHK放送センター
同様の虚報を垂れ流した朝日新聞は、遅きに失したとはいえ、既にその報道内容を否定し一応謝罪しているが、NHKはいまだに訂正も謝罪もしていない。信用ならない朝日新聞は、読まなければ購読料は取られないが、NHK受信料は見なくても徴収される。
放送法4条は、報道は事実を曲げないですること、論争の余地のある問題はできるだけ多角的な観点から報道すること、などを定めている。この規定に反するのはもちろんNHKのみではない。しかし、放送法64条を論拠に受信料を強制徴収するNHKが、同じ放送法の4条に違反している事実は断じて看過できない。
2017年12月6日の、受信契約義務についての最高裁判決は、高裁からの原告及び被告の上告に対して「双方の上告を棄却する」というもので、要するに引き分けである。NHKは「鬼の首」でも取ったかのように、放送法64条の最高裁合憲判決が出たことばかりを吹聴しているが、これまでの下級審でも違憲判決は一度も出たことはなく、それは多くの論点の一つにすぎない。
NHKは、受信設備を持った時点で契約依頼の通知があれば、受信契約は自動的に成立すると見なしてよいと主張して争ったが、最高裁はそれを認めず「契約には受信者側の了解・承諾が必要」と述べている。この点は、NHKの見事な敗北である。
そもそも問題の本質は、64条が合憲か違憲かではない。NHKが放送法4条に歴然と違反しているくせに、同じ放送法の64条だけを振り回して、受信料を強制徴収する資格があるのかという点にあることを、この際銘記すべきであろう。
放送法が公布された1950年は、まだラジオの時代だった。テレビ放送開始は1953年であり、当初のテレビ普及率は10%に満たなかったのだ。NHKを皮切りに民放各社の開設が始まるが、当時の民放はまずテストパターンの放映のみで、要するにテレビの購入はNHKの視聴を意味していた。だから「テレビを買ったらNHKと契約せよ」という法律に一理はあった。
また、NHKを有料としたのには、当時急務だったテレビ塔など放送設備拡充の財源を、NHKの受信料から捻出するためであった。これも、テレビ普及率が10%に満たない時代には、受益者負担の原則からして合理性があった。もし放送設備の拡充を一般財源で行えば、10%に満たない富裕層への優遇との批判も起きたであろう。
テレビ普及率はその後、飛躍的に伸び、1963年には91%となった。一方、この間民放各社の番組も拡充されて、NHKを上回る視聴率を取る民放番組も決して珍しくなくなる。こうなると、テレビを買うこととNHKの視聴とは決して同義ではなく、またテレビ施設の拡充予算をNHK視聴料に依存する必然性もなくなる。
自動車の普及率が低い時代に、一般財源で高速道路を作れば、一部の富裕層を優遇する税金の支出との批判を浴びたであろう。だから、自動車を使う人が払うガソリン税で、彼らの便益になる道路整備を行うというわけである。
同様に、テレビ普及率の急上昇によって、NHKには努力無しで流れ込む受信料収入が激増し、法外な人件費支出と職員の犯罪頻発という組織的弛緩(しかん)を誘発している。テレビ設備の拡充・革新費を一般財源化しても、受益者負担の原則に反しないのは、道路財源を一般化しても不公平が生じないのと同じである。
私は現在、大学教授の傍らメディア報道研究政策センターなる一般社団法人の理事長を務め、NHK受信料不払い運動の先頭に立っている。私自身の経験も含めて、1000余人の会員から寄せられるさまざまな情報によると、NHKの恫喝(どうかつ)・甘言・詐欺まがいの嘘、認知症の独居老人や老人ホームを狙い撃ちする契約詐欺など、受信料取り立てに係る彼らの執念には並々ならぬものがある。
さらに今日、近い将来インターネット配信にも受信料が課されると危惧されている。これに対しては、NHKが技術的にやればすぐにでもできるスクランブル放送を実施し、受信料不払い者には映らないサービスを提供するよう、要求を強めていく必要がある。