頻度の高い脳梗塞「ラクナ梗塞」 夏場の脱水に注意

頻度の高い脳梗塞ラクナ梗塞」 夏場の脱水に注意


足のまひは脳梗塞の可能性も
足のまひは脳梗塞の可能性も

 読者のみなさん、暑い日が続いていますが、体調はいかがでしょうか。こんな夏場にも脳梗塞の発症が増えるのをご存じですか。今回は、脳梗塞の中で最も頻度の高いラクナ梗塞についてお話しします。
 75歳の男性のケースでは、以前から高血圧と糖尿病がありました。2日前から歩くときに違和感を覚え、右脚に力が入りにくく感じるようになりました。もともと腰が悪く、そのせいで歩きにくいことが以前からあったので放置していましたが、徐々に悪化して歩けなくなったので、済生会和歌山病院を受診されました。診察では右脚にまひがみられたものの、右手にまひはなく、片まひではありませんでした。
 脳のMRI(磁気共鳴画像装置)検査を行うと、左大脳に小さな脳梗塞が見つかり、ラクナ梗塞と診断されました。即日入院のうえ、点滴治療とリハビリテーションを受けて、まひは改善し、2週間後に歩いて退院されました。
 ラクナとはラテン語で「小さな穴」という意味であり、ラクナ梗塞とは、脳の深部を栄養する(酸素や栄養を送り届ける)直径1ミリ以下の細い血管が詰まることによって起こる、小さな脳梗塞をいいます。脳梗塞の大きさは最大でも20ミリで、5ミリ以下のものが大半を占めます。
 ラクナ梗塞の最大の原因は高血圧です。長年にわたる高血圧が細い血管に動脈硬化を引き起こし、徐々に血管が狭くなり、何らかのきっかけで突然詰まって脳梗塞になります。夏場の脱水により血液が濃縮されることが、閉塞(へいそく)の原因になることもあります。

 脳梗塞では梗塞部位に応じた症状が出ます。ラクナ梗塞は小さいので症状が軽く、見過ごされることもあります。通常は片側の手足が同時にまひする片まひになりますが、この人の場合は足のまひだけなので腰が悪いのかと思い、受診が遅れました。
 手足のまひ以外に頻度が高い症状は、ろれつ困難です。突然、ろれつが回りにくくなったというだけでも、MRIラクナ梗塞が見つかることがよくあります。こういった場合でも、非常に重い片まひや感覚障害にまで悪化することもあるので油断はできません。また、自覚症状のないラクナ梗塞が知らない間に多発して、ついに認知症を発症することもありますが、無症状のラクナ梗塞は脳ドックで診断可能です。
 予防で大切なのは高血圧の管理です。長年にわたり高血圧を放置すると、ラクナ梗塞のリスクが高くなるので要注意です。また、特に夏場は脱水にならないよう、こまめに水分補給を心がけてください。
 (済生会和歌山病院 脳神経外科 部長 小倉光博)