ボケを予防する食材4選

えっ、そんな食品が!? 3000人以上の認知症患者を指導してきた薬剤師が教えるボケを予防する食材4選

通常、アルツハイマー病は40代・50代の頃にその芽が育ち始め、無症状のまま数十年進行します。あなたが普段通りの日常を送っている間に、脳内の神経細胞シナプスは死滅を続け、脳はゆっくりと委縮していきます。

そして芽が育ち始めてから20〜30年後。

病気の進行がいわゆる"転換点"を超えると、あなたはアルツハイマー病を発症し、重度の記憶障害や人格障害などが引き起こされます。

ひっそりと忍び寄り、発覚した時にはすでに手遅れ。おそるべき不治の病アルツハイマー

一度こうなると、もはやあなたが取れる対策は、副作用のある薬剤を使ってわずかに進行を遅らせることだけ。

アルツハイマー病が生活にもたらす影響は破滅的で、トイレや食事といった日常的な動作さえ難しくなるばかりか、長年連れ添った家族の顔や、自分が誰なのかということもわからなくなり、やがて運動機能をつかさどる脳の部位が破壊され、ほとんど寝たきり状態になります。

末期に至るまでの期間は平均して発症から8年。

つまり、症状が顕著になってから対策を始めたのではすでに手遅れなのです。
アルツハイマー病患者の脳を解剖すると、そこには明確な特徴があります。脳の表面に大量に浮いた、老人班と呼ばれる銀色のシミです。

このシミはアミロイドβ( ベータ) というベトベトした粘着性のたんぱく質でできています。

アミロイドβは情報伝達の過程で生み出される物質であり、健康な脳であれば、不要な分はゴミとして分解され、脳の血管を通じて体外に排出されます。

しかし何らかの理由により排出がうまくいかなくなったり、分泌が過剰になったりすると、アミロイドβ同士が結合し、どんどん巨大化しながら脳の表面に溜まり始めます( オリゴマー化) 。

脳に溜まったアミロイドβはやがて強力な神経毒を放ち、正常な神経細胞を次々と破壊していきます。

つまり、このアミロイドβの蓄積が、アルツハイマー病を引き起こす直接的な原因のひとつだったわけです。

アルツハイマー病の原因は脳に溜まったゴミ

特に重要なのは日々の食事だとブレデセン博士は言います。私たちの脳は、私たちが食べたものによって作られているからです。

また、近年の研究によって、アルツハイマー病の原因である脳のゴミ、アミロイドβの蓄積を抑制する成分も見つかっています。


そこで今回は、最新研究の結果注目されている、認知症を防ぐ食べ物をご紹介します。

聡明さを失わず、大切な人に介護の負担をかけず、自立した長い人生を楽しむためにも、ぜひ日々の生活に取り入れていただければと思います。

最新研究で、アルツハイマー病予防に

認知症研究の世界的権威、ブレデセン博士が発表した論文によれば、早期の生活習慣の改善といくつかのサプリメントの摂取によって、初期アルツハイマー病患者の9割が回復に成功したといいます。

彼が開発したプログラムによって、現在までに500名以上が何らかの形で回復を実感しており、現在世界でもっとも注目されている理論の一つです。

彼は先日来日し、日本テレビの人気番組「世界一受けたい授業」にも出演しました。
認知症の予防食材としてもっとも注目されているものの一つが大豆です。

大豆にはホスファチジルセリン(PS)という成分が含まれています。このホスファチジルセリンは特に脳の神経細胞に多く含まれ、アルツハイマー病にも深い関わりがあることが判明しています。

ホスファチジルセリンは、日本テレビの「世界一受けたい授業」で、「脳を活性化させる驚きの食品、ブレインフーズ(脳の食べ物)」と紹介されたことでも、一躍話題になりました。

実際に被験者がホスファチジルセリン300mgを12週間摂取したところ、脳年齢が12.3歳若返ったそうです。


なぜホスファチジルセリンをとると脳が若返るのでしょうか。それは脳の細胞膜を柔らかく保つはたらきがあるからです。

もともと細胞膜は、有害物質が細胞内に入るのを防ぐ、フィルターの役目があります。しかし、細胞膜は年をとるにつれて硬くなり、徐々に必要な栄養素や酸素まで脳細胞に届かなくなります。さらに、脳内の老廃物の排出もうまくいかなくなります。

アルツハイマー病の原因は、アミロイドβというゴミの蓄積によるものでした。脳の細胞膜が硬くなってしまうと、このアミロイドβの排出がうまくいかず、蓄積が加速してしまいます。

ホスファチジルセリンはこの細胞膜を柔らかくする作用があります。

細胞膜が柔らかくなれば、脳に十分に栄養や酸素が供給され、アミロイドβは速やかに血管を通って排出されるようになります。その結果、若い頃のように綺麗な脳が保たれ、認知症を発症しにくくなるのです。


また、ホスファチジルセリンの多い脳の細胞では、シナプスの働きが強化され、より多くの情報を伝達できるため、頭の回転が速くなるといわれています。実際にホスファチジルセリンは受験生などの勉強サプリの成分としても有名です。

ホスファチジルセリンは脳の新陳代謝によって絶えず入れ替わり、また体内では合成できないため、そのままでは不足してしまいます。

ホスファチジルセリンを含む大豆、豚肉、鶏肉、牛肉、卵などから毎日の食事で摂取したり、サプリメントから摂取したりする必要があります。

食材1: 「大豆」
〜新たに注目されているブレインフード〜

ホスファチジルセリンの研究は世界中で行われ、アメリカではすでに認知症の進行を食い止める成分として広く普及しています。

副作用の報告もなく、安心して摂取することのできる成分です。

アルツハイマー病患者にホスファチジルセリンを1日200〜300㎎、60日〜6ヵ月間摂取させたところ、認識力や記憶力、注意力、集中力、学習力の向上、また異常行動が改善しました。

アメリカで実施された臨床試験において、1日300㎎のホスファチジルセリンを加齢性記憶障害の患者149名に12週間投与した結果、神経学的指標における改善が認められました。

ホスファチジルセリンを毎日飲料水に混ぜて投与した老齢ラットは、海馬の密度が若齢ラットに近いレベルで維持されていました。
実は老化とは、私たちの細胞が「サビていく」ことによって引き起こされる現象です。これを「酸化」といいます。鉄が赤茶けたサビに覆われていく現象、これも酸化ですね。

私たちの体は、年をとるにつれて日々サビついているのです。

ただし、私たちの体にも、あらかじめ細胞の酸化を防ぐ酵素が備わっています。それがSODと言われる「抗酸化酵素」です。

しかし、40代を超えた頃から、急激に抗酸化酵素は減少していきます。すると私たちの体は酸化が進み、外見・内臓ともに老け始めます。


そして私たちの臓器の中でも、特に酸化しやすい部位が「脳」です。脳の大部分を構成する脂肪は非常に酸化しやすい物質なのです。

脳の老化が進めば、記憶力や認知力が低下し、本来の聡明さは失われていきます。さらに、酸化ダメージを受けた神経細胞アミロイドβを分泌することが分かっています。

こうして、老化した脳はアルツハイマー病をはじめとする認知症への坂を転がり落ちていくことになります。


では、脳の老化を防ぐためにはどうしたらいいか? もっとも簡単な方法は、抗酸化力の高いものを毎日食べるということです。加齢により失われる抗酸化酵素は、実は食によって補うことができます。

ここで登場するのが、玄米に含まれるフェルラ酸という成分です。

フェルラ酸はポリフェノールの一種です。植物を酸化から守る機能があり、私たちの体内に入ると抗酸化物質として作用します。

ちなみに今までに最も長生きしたのは、122歳まで生きたフランス人女性のジャンヌ・カルマンだと言われます。彼女の大好物は赤ワインとチョコレート。どちらもポリフェノールが多く含まれる食べ物です。


ポリフェノールは自体はほとんどの野菜やフルーツに含まれ、現在8000種類以上が確認されています。その中でも近年注目されているのが、玄米や米ぬかに含まれるフェルラ酸です。数あるポリフェノール中でも、フェルラ酸は体内への吸収率や利用率が極めて高いのです。

臨床試験ではアルツハイマー病を始めとする認知症に対しても改善・抑止効果が認められ、アリセプトなどの治療薬と合わせて摂取するよう指導する医師もいます。

フェルラ酸の効果については、非常に多くの学会報告がなされています。

食材2 :「玄米」
〜加齢によるサビつきを防ぐ強力な効果〜

フェルラ酸に関する臨床データ

・韓国の斡林大学生薬研究所が、フェルラ酸を与えたマウスは、アミロイドβによる記憶や学習力の低下を抑制できるという研究成果をイギリスの薬学雑誌に掲載。 

・2008年の広島大学における研究において、フェルラ酸を含むサプリメントを摂取し続けた軽度の認知症患者に、記憶や判断力の改善が見られました。

アルツハイマー病患者143名にフェルラ酸を含むサプリメントを9ヶ月間投与したところ、75%に認知機能低下の抑制が見られました。

・株式会社ファンケルが2016年に行った実験によると、神経細胞にフェルラ酸を投与したところ、アルツハイマー病の原因物質の一つであるタウが40%減少したことが確認されました。

食材3 :「ヤマブシタケ」
認知症予防に画期的な効果〜

あなたはヤマブシタケというキノコをご存知ですか?

森の奥深くに自生する白い球状のキノコで、その採取の困難さから「幻のキノコ」とも呼ばれます。中国では古くから漢方薬としても利用されていました。

このヤマブシタケに含まれる特有の成分が、認知症予防に画期的な効果があることが判明し、ヤマブシタケは認知症を防ぐキノコとして一躍有名になりました。

ヤマブシタケから発見されたヘリセノンは、NGF(神経細胞成長因子)を活性化させる働きがあります。NGFとは、いわば神経細胞の栄養剤です。アミロイドβによって破壊された神経細胞を修復・再成長させる働きがあります。

通常、NGFを食べ物から摂取しても、血液脳関門というバリア機能に阻まれ、脳の必要な部位に届きません。しかしヘリセノンは、脳のバリアを容易に通過し、脳内のNGFに直接たっぷりと栄養を届けることができます。

またもう一つ、アミロバンという成分も近年、同じヤマブシタケから分離に成功しました。ヘリセノンが神経細胞の栄養であるのに対し、アミロバンは神経細胞を保護する物質です。

脳内に蓄積したアミロイドβの毒性を弱める働きがあり、静岡大学、中国薬科大学をはじめ、国内外の研究施設、クリニックで研究・利用されています。
ヘリセノン、アミロバンに関する臨床データ

・脳細胞にヤマブシタケ抽出物を加えた試験管実験では、NGFの分泌量が通常の4倍に増加。その培養液を神経分化モデル細胞に与えると、神経細胞の突起(シナプス)が顕著に伸びることがわかりました。

・軽度認知症患者のグループにヤマブシタケ乾燥錠剤を16週間摂取してもらい、長谷川式簡易知能評価スケールで調べたところ、全員開始時に比べて1~6ポイント、スコアを上昇させました。長く摂取するほどテストの成績は向上し、16週目以降に摂取を中止したところ、スコアの低下がみられました。

認知症患者を2群にわけ、10人にはヤマブシタケ錠剤を1日12粒。7人には認知症治療薬として一般的なアリセプトを1日5ミリグラムを24か月間、飲み続けてもらったところ、ヤマブシタケ摂取グループは、24か月連続でテストの成績が向上しました。対してアリセプトを飲んだグループは12か月目以降から成績が徐々に下がっていきました。
ヤマブシタケはいつでもどこでも入手できるというわけではありません。「今後スーパーから消える可能性がある食品」としてテレビ番組でも紹介されたほどです。

また、実験データからもわかるように、長期間続けることによって効果を発揮するタイプの成分でもあります。安定して摂取し続けるには、サプリメントの利用がおすすめです。

食材4 : 「青魚」
〜豊富なDHAが伝達を加速させる〜

サバ、サンマ、イワシなどの青魚を食べると、頭が良くなるというのは有名な話です。しかし、どういう仕組みで頭が良くなるのか、あなたは説明できますか?

実は、私たちの脳の約60%は脂肪からできています。そしてこの脂肪は、私たちが日々食べるものによって構成されます。

私たちが質の悪い油をとり続けると、脳の大部分が質の悪い(=伝達の遅い)脂肪に置き換えられていきます。
私たちが質の良い油をとり続けると、脳の大部分が質の良い(=伝達の速い)脂肪に置き換えられていきます。

肉の脂身に含まれる飽和脂肪酸や、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸は、あまり質の良くない油です。逆に、質のいい油の代表格が、青魚に含まれるDHAEPAです。

DHAEPAを取ることで情報伝達が円滑になり、記憶力が改善したり、頭の回転が速くなったりするというわけです。さらにDHAEPAは動物性の脂肪に比べてはるかに酸化しにくく、加齢による老化を防いでくれます。

DHAEPAは他にもサケ、ブリ、タラなどにも多く含まれています。日頃からこれらの魚を週に3回以上食卓に載せることをお勧めします。
DHAEPAに関する臨床データ

・ニューヨークに住む高齢者1880人を対象に14年間かけて行った調査で、地中海式の食事を忠実に実践した人は、そうでない人に比べてアルツハイマー病の罹患率が32~40%減少していました。

・米国のロードアイランド病院の研究チームが1043人の高齢者を対象に6ヶ月かけてた行った調査では、日頃からDHAサプリを摂取していた人は、摂取していなかった人に比べ、主要な脳領域の萎縮が軽減されていることが確認されました。