世界中のロボットが東京に集結 総額1億円かけ10月に真剣勝負

【びっくりサイエンス】
世界中のロボットが東京に集結 総額1億円かけ10月に真剣勝負


コンビニエンスストアでの実用化を目指して開発が進むロボット=平成29年12月、仙台市青葉区(NEDO提供)
コンビニエンスストアでの実用化を目指して開発が進むロボット=平成29年12月、仙台市青葉区NEDO提供)
 
私たちの暮らしに身近な存在となりつつあるロボット。その開発の最前線に触れられる政府主催の一大イベント「ワールドロボットサミット(WRS)」が、10月に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される。先端技術の粋を集めた世界中のロボットが、総額1億円以上の賞金をめぐって競い合う姿を無料で見られる貴重な機会だ。
接客、トイレ掃除…コンビニロボットが競演
 WRSが目指すのは、人間とロボットが当たり前のように一緒に暮らす社会だ。もうじき実現すると見込まれる一方、克服すべき技術的課題も少なくない。そこで競技の場を設け、国内外の高度なロボット同士を競わせることで研究開発を刺激する狙いだ。競技とは別に、ロボットの展示や第一線の専門家らによる講演も行われる。
 競技は9つの部門があり、賞金は部門ごとに割り当てられる。家庭内やコンビニエンスストア、工場内などでの手伝いや作業のほか、インフラ点検や災害対応などさまざまな部門が設定された。
 このうちコンビニでの作業はWRSが世界初の試みで「商品の陳列と廃棄」「接客」「トイレ掃除」といった実用的な作業が設定された。従業員の負担軽減などが見込まれ、近い将来のロボット導入が期待される有力な現場の一つといえよう。
 また、インフラ点検や災害対応はパイプラインなどを想定。異常の検知や障害物の乗り越え、人命救助といった技術を競う。

 これらは画像認識や遠隔操作などを含めた高度な技術の組み合わせが必要で、まさにロボット開発の総合力が問われている。
福島第1原発事故で揺らいだ“ロボット大国”
 出場チームは134チームで半分近くが海外勢。米国や欧州のみならず、中国や韓国、台湾といったアジアからも多くのチームが参加する。
 ロボットの社会での活用を目指しているだけに大学からだけでなく、製品化を目指す企業からの参加も目立つのが大きな特徴だ。
 なかにはロボットがサッカーの技量を競う世界大会「ロボカップ」の優勝チームや、米アマゾンが物流の自動化に向けて開催している「アマゾン・ロボティクス・チャレンジ」で上位に食い込んだ強豪チームも含まれる。
 WRS開催の背景にあるのは、東日本大震災で発生した東京電力福島第1原発事故での苦い経験だ。高い放射線量の下、がれきが道を阻む原子炉建屋で国産ロボットは歯が立たず、最初に入って調査を行ったのは、米軍向けなどに開発された米国製のロボットだった。

 いわば“ロボット大国”のメッキがはがれた形で、実際に現場で役立つロボットの開発が強く意識される象徴的な出来事となった。
「ロボットがある暮らしを体感」
 WRSは経済産業省新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)が主催。今回は2020年に開かれる本大会に対する「プレ大会」、つまりは前哨戦としての位置づけだが、内容的には遜色ない。
 経産省産業機械課ロボット政策室の石井孝裕室長は「世界レベルの企業や大学関係者が東京に集まる貴重な機会。ロボットがある暮らしを体感していただきたい」と話す。
 期間は10月17日から21日までの5日間で、入場は無料。原則として事前登録が必要だが、入り口で手続きをすれば当日飛び込みでも大丈夫だ。
 20年の本大会は、中部国際空港に隣接して来年完成予定の愛知県国際展示場(同県常滑市)を本会場とし、インフラ点検や災害対応部門の競技に関しては無人機開発の拠点として整備が進む「福島ロボットテストフィールド」(福島県南相馬市など)で行われる。(科学部 小野晋史)