ドローンテロ対策に新手法 独警察など配備開始

ドローンテロ対策に新手法 独警察など配備開始
 編集委員 高坂哲郎

普及が進むドローン(小型無人機)がテロなどに悪用されるリスクへの対処が急務になっている。不法ドローンの突入を阻止する様々な取り組みが試みられているが、いずれも弱点があり、各国の警備当局の悩みは尽きない。そんな中、ドローン対策の「救世主」になるかもしれない装備「スカイウォール」がこのほど登場。すでにドイツ警察などが採用し、関係者の間で注目を集めている。
オープンワークス・エンジニアリングが開発したドローン捕獲システム「スカイウォール100」
オープンワークス・エンジニアリングが開発したドローン捕獲システム「スカイウォール100」
2018年10月、都内で開催された警備関係の見本市「テロ対策特殊装備展」(SEECAT)のブース前で日本の官民警備関係者らが足を止めていた。展示されていたのは、英国のベンチャー企業、オープンワークス・エンジニアリングが不法ドローンを捕獲するために開発した「スカイウォ-ル100」だ。
人が肩の上に乗せて携行できる同システムは、侵入ドローンを発見したら、(1)組み込まれている照準器の誘導表示に従い射手が標的ドローンに照準を合わせる(2)射程100メートルの迎撃弾を強力な空気圧で発射する(3)ドローンの間近で迎撃弾から約3メートル四方のネットが広がり、ドローンを包み込むように捕獲する(4)捕獲直後にパラシュートが開き、ドローンをゆっくりと地上におろす――という仕組みだ。空気圧を高めて射程を300メートルに伸ばした車載型の「スカイウォール300」もある。
捕獲用のネットを発射するシステムはほかにもあるが、射程が100~300メートルもあるものはこれまでなかった。また、照準時に迎撃弾がドローンまでどのくらいの距離でネットを広げるのが最適なのかを瞬時に自動計算するのも特徴だ。こうした性能が評価され、同システムは、優れた対テロ装備品に授与される英国の2018年度「カウンター・テラー・アワーズ(対テロ装備品賞)」(無人機部門)を、ほかの4候補をおさえて受賞した。
標的のドローン(下)をネットで捕獲後、パラシュートを広げて降下する「スカイウォール100」の迎撃弾
標的のドローン(下)をネットで捕獲後、パラシュートを広げて降下する「スカイウォール100」の迎撃弾
ドローンの急速な普及に伴い、テロに悪用されるリスクは確実に増加している。日本では2015年4月、首相官邸の屋上に不法ドローンが落とされる事件が発生。政府は19年以降に相次ぐ「即位の礼」、東京五輪パラリンピックなど重要イベントの期間中、会場などの上空でのドローン飛行を原則禁止できる法整備を進める構えだ。ただ、こうした法整備では、一般人によるいたずらのようなドローン使用は抑止できても、確信犯のテロリストによる犯行を完全に阻止できる保証はない。
これまで各国の警備当局は、不法ドローン対策としてさまざまな取り組みをしてきた。既にある手段で手っ取り早く侵入を阻止できるものとしては散弾銃(ショットガン)があるが、使用時に散弾や破壊されたドローンの残骸が現場一帯に降り注ぐため、多数の人が集まる場所ではまず使えない。ドローンが危険な化学剤や放射性物質を搭載している可能性もある。