南海トラフ地震、異常現象への対応は1週間

南海トラフ地震、異常現象への対応は1週間
中央防災会議部会が骨子案

政府の中央防災会議の作業部会は13日、巨大地震発生の恐れがある南海トラフ震源域で、異常現象が起きた場合の対応方針の骨子案を公表した。震源域の一部で地震が起きた場合、被災しなかった他地域も「自主避難」などの警戒対応を一斉に開始し、1週間程度続けることを明記。避難先の事前確保など住民や企業の「自助」も重視した。
国は2017年11月から、南海トラフ震源域で異常が確認された場合、「地震発生の可能性が高まった」とする臨時情報を流すことにしている。ただ、震源域は極めて広い。異常現象のあった位置から離れた地域の住民や企業がどう対応するかは不明確だった。
南海トラフ震源域では東海地方などを襲う東海地震紀伊半島などが被災する東南海地震、四国などで起こる南海地震――の3つの大地震が同時もしくは連動して起こる可能性がある。
一部の地震が起きて臨時情報が出された場合、過去の記録では連続して地震が発生する可能性が高い。被災しなかった地域も住民が可能な限り防災対応を取っておく必要があるという。
骨子案は交通機関停止などの強い制限ではなく、安全と社会・経済活動のバランスを取りつつ、自助や地域の共助を重視したものになった。
骨子案は臨時情報を出すケースについて、(1)南海トラフ震源域の東側か西側の半分でマグニチュード(M)8級の揺れが襲う「半割れ」(2)震源域の一部で巨大地震の前震と疑われるM7級の揺れを観測する「一部割れ」(3)住民が揺れを感じないプレート境界面で地殻変動が起きる「ゆっくりすべり」――の3つを想定した。
「半割れ」の場合、地震発生後の避難では津波や土石流から逃げ切れない地域で住民全員が事前に避難する。その他の地域では自主避難や警戒レベルの引き上げで対応し、通常の社会活動をできるだけ維持する。「一部割れ」では必要に応じて自主避難する。
半割れでも一部割れでも「1週間程度の対応」を続け、状況に応じて警戒度を下げる。「ゆっくりすべり」の場合は期間を定めず「警戒レベルを上げる」とした。
臨時情報が出ると混乱が起きる可能性がある。骨子案は自主避難の場合に「あらかじめ安全な知人宅や親類宅を自ら確保しておくこと」を推奨。食料なども「自ら確保」を基本とした。ただ13日の部会では委員から「自分で食料などを入手できるのはかなり限定的で、ありえない」などとの批判も出た。
企業については、半割れで従業員に生命の危険が見込まれる場合は回避するとしたが、すべてのケースで設備点検などで備えを再確認しながら事業を継続し「被害軽減や早期復旧できる措置を可能な限り実施する」と指摘した。
多数の人が出入りする病院や商業施設、交通機関や大規模工場などは関係省庁と調整し、個別に対応方針を協議する必要があるとした。
作業部会は年内に最終報告書を取りまとめ、公表する。政府は年明け以降、報告書を基に住民や企業が個々の対応を検討するためのガイドラインを作成する。