コラム:中国で意外な「トランプ人気」
コラム:中国で意外な「トランプ人気」
米国の輸入関税引き上げや投資規制の強化が恩恵をもたらすとは、中国の民間企業幹部も政策参謀も考えていない。直感に反するトランプ氏への支持は、別のところから来ている。中国は故トウ小平政権下の1980年代から「中国独自の社会主義」という理念の下で市場経済の要素を取り入れたが、その機運が途絶え、理念に合致する改革ですら滞っていることへの不満が根底にあるのだ。
不満を抱く人々にとって、習氏は経済問題にほぼ無関心で「中国共産党を再び偉大にする」ことに集中しているように映る。例えば党による国有企業への統制を強化し、企業の定款に党の役割を挿入するなどの措置を進めた。政府高官らも厳しい改革の推進には及び腰のように見える。
その上、政府による一部産業への関与、特に消費者向けハイテク分野への介入がここ1年で目に見えて強まった。政府は騰訊控股(テンセント・ホールディングス)の人気ゲーム販売について、近視や中毒の恐れがあるとして新規認可を凍結し、同社は第2・四半期に2005年以来初めての減益となった。
またコンテンツ配信プラットフォーム運営の北京字節跳動科技(バイトダンス・テクノロジー)は今年、政府高官から人気のニュースアプリ「今日頭条」のダウンロードを閉鎖させられるなどして、創業者が謝罪する事態となった。総合的に見て、中国の民間セクターが暗い政策見通しを抱くのも無理はない。
習氏その他の高官はここ数週間、雇用を生み出せるのは民間企業しかないとして、企業家のアニマルスピリットを鼓舞する発言を始めた。習氏は今月北京で開いた民間企業のシンポジウムで、民間企業と企業家に「揺るぎない支援」を約束。減税や資金調達の改善、国有企業と民間企業の競争条件の平等化も誓った。
その後、李克強首相ら高官や人民日報などの有力メディアも同様のメッセージを発し、民間企業を持ち上げた。これがある程度まで米国の圧力のおかげなのか、単に民間部門の重要性を認識したからなのかは分からない。いずれにせよ、中国の企業幹部らは内心、自国の政府よりトランプ氏に改革の期待をかけている。
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