日本のイージス・アショア購入で米軍が大喜びの理由

日本のイージス・アショア購入で米軍が大喜びの理由

12/6(木) 6:00配信

JBpress

 中国海洋戦力が南シナ海、そして東シナ海で軍事的優勢を手にしつつある。アメリカとしては、東アジアでの軍事的優勢を維持するために、それらの中国海洋戦力を抑制できるような態勢を確保しなければならない状況に直面している。

【写真】南シナ海を航行する米海軍の誘導ミサイル駆逐艦ディケーター。米海軍が「航行の自由作戦」を実施しても中国は動じない。

■ 地の利は中国にあり

 アメリカと中国が軍事衝突する場合、戦域は南シナ海あるいは東シナ海、そして場合によっては西太平洋ということになる。

 つまり、中国軍にとっては、西太平洋を南シナ海東シナ海に接近してくるアメリカ軍を、自国領土に近接している海域やその上空で待ち受ける形となる。

 逆にアメリカ軍は、日本を本拠地にしている第7艦隊や空軍(三沢基地、嘉手納基地、横田基地)ならびに海兵隊岩国基地)の航空部隊以外は、グアム、ハワイ、そして米本土から太平洋を越えて南シナ海東シナ海に兵力を投入しなければならない。

 したがって、「過酷な距離」と称される不利な軍事的条件を課せられているアメリカ軍に対して、中国軍が地の利を手にしていることは明白である。

 中国がハワイやアラスカやアメリカ西海岸に侵攻する場合には、そのような立場は逆転するが、中国側にはアメリカ領域に侵攻する理由は全く見当たらない。しかし、これまで長きにわたって東アジアでの軍事的優勢を手にしてきたアメリカ側には、その既得権益を確保しておくためには中国との軍事的対決も辞さないという強い動機が存在する。

 もちろん、米中全面戦争は避けたいというのも、米側の真意である。そのため、あくまで中国との軍事的対決に至っても局地的な限定的衝突にとどめようとすることは確実だ。したがって米中軍事対決の戦域は、(場合によっては西太平洋を含むかもしれないが)ほぼ間違いなく南シナ海東シナ海が中心となるであろう。

■ 極めて強力な攻撃能力が必要な米軍

 南シナ海東シナ海で米中による軍事的な睨み合いが勃発した場合、それらの海域に出動可能な艦艇数は中国海軍側がアメリカ海軍側を圧倒している。かつては中国海軍の艦艇は、数量は多くても「戦力的にはアメリカ海軍や海上自衛隊に対抗することなど考えるだけ無駄」といった状態であったが、現在の中国海軍の戦力は、部分的には海上自衛隊や米海軍を凌駕する艦艇をも手にするに至っている。

 アメリカ海軍が中国近海で中国側を軍事的に抑制しようとする際は、中国海軍の艦艇だけが障害となるわけではない。中国本土の多数の航空基地から発進する航空機、同じく中国本土のあらゆる場所から発射される様々な対艦ミサイルや対空ミサイル、それに中国沿海域の海上、海中、空中といった、中国軍側にとっては安全な領域に展開する艦艇や航空機から発射される各種ミサイルなども、アメリカ海軍や米軍航空部隊にとって厄介な障害となって立ちはだかるのだ。

 したがって、アメリカ軍が、このように質・量ともに強化が急速に進んでいる中国軍の接近阻止戦力と対峙するためには、日本を中心に極東方面海域に展開するアメリカ海軍に、極めて強力な防空能力、対艦攻撃能力、対地攻撃能力を備えさせなければならないというわけだ。

■ 弾道ミサイル防衛任務が重荷に

 しかしながら、日本周辺海域に展開するアメリカ海軍艦艇は、弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile Defense)を重視する態勢を固めてきていた。