いに暗黒物質の謎が解明!?失われた95%に迫る新しい理論が発表

ついに暗黒物質の謎が解明!?失われた95%に迫る新しい理論が発表 「暗黒流体として生まれ続けている」

space 2018/12/06
Photo credit: UCL Mathematical & Physical Sciences on VisualHunt.com / CC BY
Point
・銀河がバラバラにならないことや、宇宙の膨張から、宇宙の95%は目に見えない暗黒物質ダークエネルギーでできているとされる
・Λ-CDMモデルを改変した新たな理論によって、暗黒物質ダークエネルギーが、暗黒流体の形をとって生まれ続けていることが示される
・理論の証明には、建設中の最新の電波望遠鏡による試験が必要
現代物理学最大の謎が解かれてしまったかもしれません。
新説を提示したのは、オックスフォード大学イーリサーチセンターのジェイミー・ファーネス博士。彼によると、暗黒物質ダークエネルギーは、統合された後、負の質量を持つ液体として振る舞っているというのです。研究は10月26日付で“Astronomy and Astrophysics”に発表されています。

A unifying theory of dark energy and dark matter: Negative masses and matter creation within a modified ΛCDM framework
https://www.aanda.org/articles/aa/abs/2018/12/aa32898-18/aa32898-18.html

負の質量を持つ物質は、通常物質を「押す」ことによって近づいてきます。直感的には信じがたい現象ですが、例えば負の質量を持つボールを手で押すと、押した側に転がるのではなく、手前に返ってくるのです。この理論は、もともとはアインシュタインが100年前に予言した宇宙項の証明にもなります。
Λ-CDMと呼ばれる、現在広く知られている宇宙モデルでは、物理的に暗黒物質ダークエネルギーが似たものであるということを強調しています。このモデルは、冷たい暗黒物質による宇宙モデルに、宇宙の膨張力を説明するための宇宙項Λを加えたものです。そして、暗黒物質について分かっているのは、重力の影響を通常物質に及ぼすということだけです。
新たな理論で示されているのは、暗黒物質と暗黒エネルギーが統合されて液状となり、「負の重力」を持つことで、通常物質を押し返しているということです。
負の質量を持つ物質についてはこれまで、宇宙の膨張につれて密度が低くなると考えられることから、存在が否定されてきました。なぜなら、ダークエネルギーが時間とともに薄くならないことが観測によって示されているからです。しかし、ファーネス博士は、負の質量が継続的に創造されるような、「クリエーション・テンソル」を適用しています。つまり、負の質量が次から次へと爆発的に創造されるため、宇宙が膨張してもその負の質量の液体は薄くならないのです。この創造され続ける液体は、ダークエネルギーと同等のものと考えられます。
ファーネス博士の理論は、銀河の暗黒物質ハローの振る舞いをも正しく予測できる、初めてのものです。多くの銀河の回転は速く、そのままではバラバラになってしまうのですが、それを妨げているのが、暗黒物質のハローだと考えられています。新たな研究では、負の質量の特性をシミュレーションしており、それによって形成される暗黒物質ハローは、ちょうど最新の電波望遠鏡による観測によって推測されるものと同じでした。
100年前に、アインシュタインが自らのモデルに組み込んだ宇宙定数Λは、現在の知見からすると、ダークエネルギーと解釈されます。アインシュタインはこの宇宙定数のことを「最大の誤り」だったと後悔していますが、この定数が真空から負の重力が生み出されることを意味することを考えると、アインシュタインはまさに正しい推測をした可能性があります。
負の質量と、真空からの物質の生成という2つのアイディアを組み合わせることから生まれた新理論。そこから生まれた結果は素晴らしいもので、暗黒物質ダークエネルギーが同じ一つの物質として統合され、負の質量を持つ暗黒流体の大波を、通常物質がサーフィンしているというとてもシンプルなイメージを描き出しています。
ファーネス博士の理論の実証には、オックスフォード大学が中心となって建造中の「スクエア・キロメートル・アレイ」を使った、高性能電波望遠鏡による試験が必要となるでしょう。
 
今回の理論が正しいとすると、宇宙を構成する未知の95%の正体がわかったことになります。また、負の質量を持つと聞くとSFの世界でしか見たことのない夢も広がります。今後の研究による証明に期待です。