武田のシャイアー買収最終盤、成立なら円売り特需
コラム:武田のシャイアー買収最終盤、成立なら円売り特需=木野内栄治氏
シャイアーの株主総会では、半数以上の賛成および議決権ベースで75%以上の賛成が必要だが、武田が提案した買収条件は当時のシャイアー株より6割程度高かったため、すでに株価は大幅に上昇している。反対すれば株価は当時の水準に下落すると見込まれるため、シャイアー株主の多くが賛同する可能性が高い。
今回の買収はリスクが大きいとして創業家出身の元経営トップが反対を表明しており、承認には若干の不透明感もある。一方、米議決権行使助言会社が賛成票を投じるよう推奨していることなどからか、日本経済新聞は11月13日付朝刊で、9割近くの株主の賛成が得られると報じた。
買収条件は、シャイアー1株に対し、現金30.33ドルと武田株0.839株を割り当てるのが主な内容だ。シャイアー株式約9億3000万株に対し、総額6兆円以上のディールとなる。シャイアーの株価は11月30日時点で買収案に対して6%程度割安だが、買収提案が了承されると急速に価格差を縮めるだろう。
ただし、その後もシャイアー株を売却する動きは続くとみられる。英FT100種の構成銘柄である同社株は、指数から除外されるだろうから、FT100に連動して運用しているファンドはシャイアー株を売却せざるを得ない。他にも、欧州企業の株以外は約款上保有できず、手放すファンドが出てくるだろう。
つまり12月5日から約1カ月のかなり短い期間に、最大4兆円分の新株発行に絡んだ円売りが発生する可能性がある。買収対価の現金分である1株あたり約30ドルも、シャイアー株を買って武田株を売る裁定取引のたびにドル売り・ポンド買い、円売り・ポンド買いが出てくる。後者のほうが価格インパクトは大きく、結果として円安・ドル高が想定できる。
また、今年3月に買収交渉が表面化すると、ドル円は約5円上昇した。通常は3カ月程度で買収案件は完了するのだが、今回は年終盤に臨時株主総会を開くことが5月の大型連休明けに表明された。長期戦になるということで、円安の動きはいったん止まった。すでにある程度、相場には織り込まれている可能性もある。