「バイ・アメリカン」に押され…日本の防衛産業は苦境に
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米国からの武器輸入が安倍政権で急増している。18日にも閣議決定する次期防衛大綱や中期防衛力整備計画にも、大型の米国製武器導入を盛り込む。トランプ政権の「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」に押され、日本の防衛産業は苦境に。目指していた国産戦闘機も実現は難しそうだ。
「これは現代の零(ゼロ)戦だな。名称も『Fゼロ』でいいんじゃないか」
一昨年秋の首相官邸執務室。安倍晋三首相は満足げに語った。スクリーンに映し出されたのは、日の丸の白と赤で塗装された最新鋭戦闘機の実証機「X2」。初の試験飛行で急旋回する動画を、防衛装備庁幹部らが説明していた。
X2は、国産戦闘機の復活を目指して、防衛省と三菱重工などの日本企業がF2戦闘機の後継として開発を進めた実証機だ。レーダーに映りにくいステルス性は米軍最新鋭機F35より優れ、エンジン性能や機動性も高い。部品の93%は日本製だ。安倍首相に事務方はこう説明した。「米国の協力なしで日本もここまでがんばった。これはF2の後継につながります」
X2の模型を手渡された首相は「早速、執務室に飾るよ」と笑顔で応じた。
X2初飛行の様子は、米メディアも「日本も高度な技術が要求されるステルス機の保有国に仲間入りした」(CNN)と報じた。
日本は1977年、戦後初の国産戦闘機F1を導入したが、後継のF2開発では、日米貿易摩擦のさなかで米国が自国の戦闘機購入を迫り、日米共同開発に。関係者の間では今も「技術は全てただで米国に提供し、開発資金も一方的に日本が拠出した」(防衛省幹部)と苦い思いが残る。
航空自衛隊が現在保有するF4、F15は、米国開発だが「ライセンス料」を支払って日本企業が製造。だが両機ともライセンス生産は終了し、新たに導入するF35では、日本企業が担うのは機体の組み立てなどだけで、技術基盤の維持といった点では利点に乏しい。
再び国産の戦闘機を造ろうと、エンジンの開発やレーダー、ステルス性など研究事業を立ち上げ、その集大成が「心神(しんしん)」と呼ばれたX2だった。
だが、前途には暗雲が立ち込め…
離陸したステルス実証機「X2」=2016年4月22日午前8時47分、愛知県豊山町の県営名古屋空港、小川智撮影
離陸するF2戦闘機=航空自衛隊三沢基地
離陸するF15戦闘機=航空自衛隊千歳基地で
米テキサス州の工場で初公開された空自配備の最新鋭ステルス戦闘機「F35A」1号機=2016年9月23日、ロッキード・マーチン・フォートワース工場、佐藤武嗣撮影
米国からのFMS調達予算額の推移
東京で開催された国際航空宇宙展では、防衛装備庁も出展。同庁が研究し、IHIが設計・製造したエンジンXF5-1は、F2後継機を目指した実証機X2にも搭載。展示では「国産初の本格的アフタバーナ付ターボファンエンジン」と説明していた=11月28日、東京ビッグサイト、佐藤武嗣撮影
新型迎撃ミサイルSM3ブロックⅡAの弾頭の模型=11月28日、東京ビッグサイト、佐藤武嗣撮影
米ハワイ州カウアイ島にある、イージス・アショアの実験施設
東京で開催された国際航空宇宙展の米ロッキード・マーチン社のブースでは、日本に配備される陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の模型が展示された=11月28日、東京ビッグサイト、佐藤武嗣撮影
近年の航空自衛隊保有の戦闘機
トランプ米大統領の日本に対する「バイ・アメリカン」発言