中国では日本経済について語る際、必ずと言って良いほどバブル崩壊後の不景気が続いた「失われた20年」のことが取り沙汰される。日本経済の成長が低迷し、中国に世界第2位の経済大国の座を譲ることになったのは「失われた20年」のせいだという論調も少なくない。

 しかし、中国メディアの今日頭条はこのほど、外国人旅行客は日本国内で「豊かさ」や「清潔さ」、「現代化が進んだ社会」を目にして、失われた20年という言葉と現実を結び付けられないことに困惑すると主張し、「日本の失われた20年は決して不景気ではなかった」と主張する記事を掲載した。

 記事はまず、日本でバブルが崩壊し、経済成長率が低迷した時期があったのは事実だと指摘する一方で、日本人の平均寿命は世界有数で、公共交通機関も非常に充実しており、日本国民は高額なスマートフォンを所有していると強調し、「日本のどこにも失われた20年の痕跡は見られない」と主張。こうした現状に対し、英国の政府関係者はかつて「日本の現状を失われた20年と呼ぶなら、英国も喜んで失われた20年を経験したい」と語ったほどだと論じた。

 では、「失われた20年」の真相はどうなのだろうか。記事は、西暦1990年から2000年までの10年間にわたる日本のGDP成長率は平均1.4%にとどまり、さらに、2001年から2010年の10年間ではGDP成長率が1%以下となったことを紹介し、他の先進国より成長率が低かった日本は確かに「失われた20年」を経験していたと指摘。だが、その期間中の日本では労働力が急激に減少し、GDPの増加を抑制したと指摘する一方で、日本は労働生産性を高めることで労働力の減少を補っていたのも事実だと強調した。

 そのほか記事は、日本は海外に莫大な資産を所有しており、日本の対外純資産残高は世界一であることを強調し、海外に所有する日本の資産は日本のGDPには反映されないと指摘。GDP成長率だけで日本経済を評価すれば「失われた20年」と映ると指摘する一方で、実際の日本社会は依然として豊かなままであると主張した。

 中国でも不動産バブルがはじけるかもしれないと危惧されている。中国のバブルが崩壊することはないという強気な声も存在するが、米国との貿易戦争などリスクが存在しているのも事実であり、それゆえ多くの中国人はバブル崩壊後に日本が経験した「失われた20年」に関する話題に高い感心を抱いているようだ。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)