アニメ輸出、好調続く? (スグ効くニュース解説)

アニメ輸出、好調続く? (スグ効くニュース解説)
奥平和行編集委員

スグ効くニュース解説
2018/12/12 6:00
アニメの輸出が好調だそうです。勢いは続きますか。
回答者:奥平和行編集委員 アニメの輸出と聞いてどのような作品を思い浮かべるでしょうか。「ドラえもん」や「ドラゴンボール」、「美少女戦士セーラームーン」といったあたりが一般的かと思います。アニメの登場人物の格好をまねたコスプレも広がり、海外で日本製アニメの人気が高まっていることを示す事例としてよく紹介されています。
アニメは日本が誇る輸出品だ=共同
アニメは日本が誇る輸出品だ=共同
1997年に放送が始まった「ポケットモンスター」は120を超す国や地域で放映され、ゲームソフトやカードゲーム、キャラクターグッズなどを含む市場規模は累計で6兆円を上回るといわれています。複数のジャンルを組み合わせるメディアミックスの成功例となり、日本のアニメが飛躍する契機となりました。
統計もこうした成長を裏付けています。アニメ制作会社などが加盟する業界団体、日本動画協会によると、日本製アニメの海外の市場規模(ユーザーが支払った金額の合計)は2005年に5215億円まで増えました。02年の実績に比べると40%も多い水準です。
ただ、一本調子で伸びたわけではありません。06年以降は一大市場である中国で海外アニメのテレビ放映を制限したことが逆風となり、08年のリーマン・ショックの影響も受けました。市場規模は12年に約2400億円まで縮小しました。再び成長軌道に乗るのは13年以降です。
直近の17年は市場規模は9948億円に増え、国内の1兆1579億円に迫る水準です。アニメを含むコンテンツなどの輸出促進を目指すクールジャパン機構は、投資先の経営不振が相次いで発覚するなどゴタゴタが目立ちましたが、輸出そのものは堅調といえます。
米ネットフリックスをはじめとするネット配信を手がける米国企業が日本のアニメに注目し、一時は振るわなかった中国でもネットを通じた視聴が伸びています。子ども向けに加えて、女子高生が主人公を務める「ラブライブ!」など、大人向けも輸出拡大に貢献するようになってきました。
輸出主導による市場拡大が続いており、関係者はほくほく顔……と思いきや、必ずしもそうとは言い切れないようです。新作の準備を進めているあるエンターテインメント企業の幹部に話を聞くと、「公開は早くても20年以降になり、見通せない」とのことでした。制作が間に合わないそうです。
アニメは中小・零細の企業が制作の現場を支え、こうした職場は処遇を含む雇用環境があまりよくないことで知られていました。少子高齢化に伴う人手不足で人材確保が難しくなっており、たとえ確保できたとしても賃金が上がって制作コストの上昇が避けて通れないのです。
経済産業省は13年に「アニメーション制作業界における下請け適正取引などの推進のためのガイドライン」を策定し、中小・零細企業に利益がきちんと還元される環境づくりを進めています。輸出産業としてアニメを伸ばすには、制作現場の活力を高めて作品の品質を維持・向上することが条件のひとつとなります。
結論: デジタル技術による省力化や適正な利益還元など、制作現場の環境改善が急務です。