16年の新規がん99万人 報告義務化で初、地域格差大きく

16年の新規がん99万人 報告義務化で初、地域格差大きく

社会
2019/1/17 0:00
厚生労働省は16日、2016年に新たにがんと診断された患者数が延べ99万5132人だったと発表した。大腸がんがトップで、胃、肺と続いた。今回は16年施行のがん登録推進法に基づき、がん患者を診察した全ての病院と都道府県指定の診療所に報告を義務付けた「全国がん登録」に基づく初の公表データとなる。
がんは日本人の死因第1位。公表された統計によると、16年に新たにがんと診断されたのは男性が約56万6千人、女性が約42万8千人で、合計で年間延べ100万人近くに上った。
部位別で最も多かったがんは大腸で、胃、肺が続く。男性は胃がトップで前立腺が2位、大腸が3位だった。女性の最多は乳房で大腸、胃と続いた。
今回のデータでは、どの地域でいつ、罹患(りかん)したかを把握、地域ごとの状況を分析できる。罹患状況では地域によって特徴がみられた。
例えば胃がんの人口10万人あたりの罹患率は新潟74.7、秋田70.3、山形63.2など、東北地方や日本海側を中心とした地域が全国平均(48.2)を上回る。肺がんは長崎55.5、北海道51.4、愛媛51.0など北海道、九州や四国の一部で全国平均(44.4)を超える傾向にあった。
男女を合わせた全部位の罹患率が最も高かった都道府県は長崎で454.9。次いで秋田(446.3)、香川(436.7)、北海道(428.2)、宮崎(426.4)の順となった。胃がん、肺がんなどの罹患率の高い地域が上位を占める傾向がうかがえる。
都道府県別では罹患率は人口10万人あたり最大で100人程度の開きがあり、地域格差が目立った。

16年分の統計は「全国がん登録」により初めて行われた。がん登録推進法に基づき、全ての病院と都道府県が指定した診療所にがん患者の報告を義務付けるものだ。
15年分まで行われていた「地域がん登録」に基づく統計に比べ、対象となる病院や診療所が大幅に増え、患者の実態を正確に反映している。
調査に携わった国立がん研究センターの若尾文彦がん対策情報センター長は「従来手法の調査と、おおむね同様の傾向が示された」と指摘。発症傾向などの地域差が、改めて裏付けられたとしている。差が生じる要因としては、喫煙率や胃がんにつながるピロリ菌の保有状況などが関係しているとみられる。
厚労省は今後、全国がん登録に基づいて、がんの治癒の目安となる5年生存率などのデータも随時公表する。がん対策基本法では国などに、がん対策に取り組む責務を明確にしている。厚労省は「地域ごとのデータを詳細に分析し、効果的ながんの予防対策や研究を推し進めたい」(がん・疾病対策課)としている。

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