3Dプリンターで住宅作れます 米新興企業が実用化
3Dプリンターで住宅作れます 米新興企業が実用化
工期は「数日」、住宅不足対策として期待も
【米テキサス州オースティン】米テキサス州を拠点に建築技術を手がける新興企業アイコンが11日、住宅用の3Dプリンターを発表した。これを使って年内にもコンクリート住宅を数日間で建てられるようになるという。この技術は住宅不足の有望な解決策となり得るが、規制や技術の面でまだ複数のハードルが残っている。
「もはや科学プロジェクトではない」。同社の共同創業者であるジェイソン・バラード最高経営責任者(CEO)はそう語った。
同社によると、今回お披露目されたプリンターで、広さ2000平方フィート(約185平方メートル)までの平屋住宅を建てられる。米国の平均的な住宅の広さである2400平方フィートに近い。これまでも米国や欧州で同様の取り組みはあったが、簡素なシェルターしか作れず、現実的というよりも将来が期待される技術にとどまっていた。
アイコンは約1年前、市当局の承認を取り付け、市内のある住宅の裏庭に350平方フィート(33平方メートル)の家を建てた。シエロ・プロパティーが宅地開発プロジェクトを進める際にはこれが地ならしの役目を果たすかもしれない。
「われわれは本来、保守的な業界だ」と、テキサス州建設業者協会のスコット・ノーマン事務局長は話す。同氏は3Dプリント技術に関与していない。
それ以外にも現実的なハードルがある。高価で重い機械設備の生産や輸送の規模を拡大するのは厄介な仕事だ。風や雨、高温や低温の環境下で住宅を建設するという難題もある。現実は「無菌の研究室のような環境ではない」とノーマン氏は指摘する。
新型3Dプリンターはタブレット端末で操作ができ、機械の稼働や監督に必要な人数は2、3人程度。重さ3800ポンド(1720キロ)の機械からコンクリートが絞り出される様子はまるでケーキの飾り付けをしているようだ。
このプリンターがあれば、住宅の骨組みを作り、壁材や断熱材を取り付け、外装の仕上げをする作業員の代わりになる。また従来の建築現場に比べて廃材の出る量が少ない。専門家の推定によると通常は建築資材の3分の1がゴミになるという。
アイコンによると、広さ約185平方メートルの住宅建築コストは約220万円。工期は数日間の見込み。土地代や配管・塗装などの諸費用を含めても総額で約30%のコスト削減になるとバラード氏は話す。
オースティンの平均住宅価格は4500万円前後だ。もし建築会社が浮いた経費をまるまる消費者に還元すれば、1300万円ほど安く家を建てられるという。
3Dプリンター住宅は空想物語のようだが、業界が直面する現実的問題への対応策になる可能性がある。労働者不足と材料価格の上昇で建設コストは高騰している。米国の住宅着工件数は過去数年間にわたり年間約120万戸にとどまり、過去の水準からすると約25万件少ない。数十社の新興企業がやはり数億ドルを技術開発につぎ込み、業界の効率性を高めようとしているが、成果を出した企業はまだない。
「人々はあれがゲームチェンジャーだったと将来振り返って思うだろう」。住宅都市開発省のベン・カーソン長官は7日、アイコンの工場を視察してこう感想を述べた。