未だ「収束」しない福一原発事故。それでも未来に原発を残すのか
未だ「収束」しない福一原発事故。それでも未来に原発を残すのか
2011年3月12日、福島第一原発で起きた未曾有の事故。多くの住民が避難を余儀なくされ、未だ故郷の地を踏めない方々も多数いるという事実を、どれだけの国民が認識しているのでしょうか。そんな現状を尻目に、現政権は原発の再稼働に躍起になっているような観があります。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、「原発のない未来を目指さないのに100年長持ちするマンションなど作る意義があるのか」と、現状に疑問を投げかけています。
原発事故をなぜ忘れられるの?
こんにちは!廣田信子です。
一旦、すべてが止まった原発が、また、稼働し始めている事実に、いったい、国土を守る、国民を守るということを、どう考えているんだろうと思わされます。福島の避難区域に暮らしていた皆さんの大きな犠牲の上に発せられた自然からの警告を、なかったことにしてしまっていいわけがありません。
その後も、想定外の自然災害は、何度も日本を襲ってきます。どんな安全基準をつくっても、それをクリアーしても、想定外のことが起こらないなんて誰が言えるのでしょうか。人間が知っていると思っていることなんて、ほんとうに一握りのことなのです。地球は生きているのであり、日本列島はその活動がもっと激しい場所に存在しているのです。原発事故は、想定外のことが起こったので仕方がなかったでは、すまされないことなのです。
そして、あれほど大騒ぎされた電力不足も今は聞きません。原発がすべて止まっているときにも聞きませんでした。昨年秋、九州地方では、電力が余ってしまって、電力の需給バランスが崩れることで、大規模な停電が発生する可能性があると心配されました。
それを防ぐために、太陽光発電等を止めて発電量を減らす「出力制御」が真剣に検討されていました。電気は、発電する量と使う量のバランスが崩れると、周波数が乱れてしまうため、発電所などが壊れないように次々に自動的に送電を停止してしまうため、大規模停電が起きるおそれがあるのです。
九州は日照条件がよいので太陽光発電が盛んでこの5年間で7倍に増えているのです。日によっては、太陽光の発電量が、日中に使う電気の8割を賄えるようになっていると言います。そこに、鹿児島県の川内原発と佐賀県の玄海原発のあわせて4基が相次いで再稼働したのですから、電気が過剰になるのです。
じゃあ、その余った電気をどう活用するか…なんていう議論があるのを聞いて、そんな状態で、何で原発を再稼働しなければならなかったのか…どんな理屈を並べられても私には理解できません。
一旦持ってしまったものをなくしていくのはたいへんな決断がいること。膨大な利害関係者がいるのですから。だからこそ、東日本大震災という大きな犠牲をきっかけに、何を置いても、未来の国民の安全のために、原発のない未来を目指さなければならなかったはずです。気の遠くなるような長い道のりですが、だからこそ、そこに向かって、歩み出さなければいけなかったはずです。
あの絶望的な状況を体験して、今も、たくさんの方が苦しんでいて、大量の汚染土壌と汚染水の処理もままならない現実があるのに、もう二度とこんなことは絶対にないと言い切って、どんどん原発を再稼働させる意味が私には理解できません。
そんな、状況を容認していながら、マンションを100年長持ちさせようという議論をするのが、何かおかしいと感じてしまうのです。マンションを100年もたせるなら、それが存在している国土の安全こそ重要です。
何度でも言いますが、原発事故は、想定外のことが起こったから仕方がないでは、すまされないことです。国土を人が住めない場所にしてしまうのですから。
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