仮想通貨不正引き出し ハッカー少年が残した痕跡

仮想通貨不正引き出し ハッカー少年が残した痕跡

仮想通貨
社会
2019/3/17 11:30
約1500万円相当の仮想通貨「モナコイン」を不正に引き出してだまし取った疑いで、警視庁が宇都宮市の少年(18)を書類送検した。仮想通貨を巡る同種事件での検挙は国内初。サイバー分野の知識を駆使して身元を隠していたハッカー少年を、捜査員はどのように特定したのか。
「私はモナッピーの攻撃者だ」。2019年1月、インターネットの掲示板上に自身の技術を誇示する英文の"犯行声明"が書き込まれた。モナコインの保管サイト「モナッピー」のサービスで不正なコイン引き出しが発生したのは18年8月のことだった。
2019年の元日、モナコイン利用者向けの掲示板に
2019年の元日、モナコイン利用者向けの掲示板に"犯行声明"が書き込まれた
捜査関係者によると、少年はモナコインを無料でもらえるサービスで、受け取りのボタンを素早く連打すると何度もコインを受け取れるシステム上の弱点を発見し、スマートフォンなどでクリックを8200回近く繰り返していたという。
サイトに接続する際は身元を隠す「Tor(トーア)」など複数の匿名化ツールを使用。受け取ったコインの送り先をたどられないよう、複数の口座のコインを混ぜ合わせて別々に送金する「ミキシング」プログラムも自作していた。
捜査員は、分散したコインの流れを丹念に追跡。少年のミキシングプログラムが不完全だったこともあり、最終的に1つの口座に集約されたコインが海外の交換会社に持ち込まれていたことを突き止めた。
モナッピー運営会社の接続履歴から匿名化ツールが無効な状態で接続した記録も発見。口座の情報などと照合して少年を特定し、掲示板の書き込みを突きつけたところ、犯行を認めたという。
ITジャーナリストの三上洋さんは「仮想通貨はサイバー犯罪の格好の標的となっている。今回は少年が残した痕跡から検挙に至ったが、国境を越える捜査体制の構築は急務だ」と話している。