年6万円の増税対策、お忘れなく 初の恒久策 低年金者970万人に12月から

年6万円の増税対策、お忘れなく 初の恒久策
低年金者970万人に12月から

2019/5/26 6:30
日本経済新聞 電子版
10月に予定される消費増税に絡む経済対策の中で、見落とされがちなのが低年金者向けの給付金だ。対象は約970万人で、通常支給する年金に最大で年6万円を上乗せする。1回限りではない恒久的な制度で、条件を満たせば上乗せされた年金を継続して受け取ることができる点に今後、関心が高まりそうだ。給付金は手続きしないと受け取れないため、注意したい。
増税緩和の給付金、過去に5回実施
年金生活者支援給付金」で、制度自体は2012年に創設された。年金を含めても低所得の世帯に対して増税の影響を緩和する目的で支給する。消費税を10%に引き上げたときにその財源を基に支給するとされたため、2度の増税延期によって実施が延びていた。
消費税引き上げの影響を緩和する低所得者向けの給付金は「臨時福祉給付金」などの名目で14年度以降に5回実施され、対象人数はもっと多かった。ただし、いずれも単発の措置。「今回は条件を満たし続ければ生涯受け取ることができるので、これまでより経済的な効果は大きい」と、みずほ総合研究所主席研究員の堀江奈保子氏は指摘する。
年金生活者支援給付金は老齢や障害、遺族など受給している年金で種類が分かれ、対象者が異なる。最も多い老齢は約770万人を見込む。65歳以上の老齢基礎年金受給者で、同じ世帯に住む人全員が住民税非課税、前年の年金などの収入が老齢基礎年金の満額相当額(約78万円)以下などが条件となっている。
金額は月額5000円を基準に、保険料の納付済み期間などで変わる。未納期間があればその分、金額は減るので、誰もが上限額をもらえるわけではない。
条件を満たすとみられる人には日本年金機構から請求手続きに必要な書類が届く。今年度新たに年金を受給する人には送付が始まっており、既存の年金受給者には9月ごろに送られる。
条件を満たすとみられる人には日本年金機構から請求手続きに必要な書類が届く
条件を満たすとみられる人には日本年金機構から請求手続きに必要な書類が届く
■10月支給、間に合わず
制度は消費税率が10%に上がる10月1日に施行される。実際に該当者が受け取るのは、10、11月分の年金が支給される12月からになり、増税のタイミングには間に合わない。10月からの支給も検討されたが、態勢が間に合わなかった。
厚生労働省は19年度予算に4カ月分の給付金の費用として1859億円を計上した。この数字を基に1人当たりの給付金月額を計算すると4791円となる。
総務省の家計調査(18年)では、高齢無職世帯の1カ月の消費支出は夫婦で約23.5万円、単身は15万円弱。消費税が8%から10%に上がれば、それぞれ4300円、2700円程度支出が増える計算だが、この増加分を給付金でカバーできる世帯もありそうだ。
年金事務所などには「自分は給付金の対象か」「親はどうか」「いくらもらえるのか」といった問い合わせが増えているという。増税の時期が近づけば、さらに注目が高まりそうだ。
(土井誠司)