パワハラ、企業名公表と違反行為明示 抑止へ法成立

パワハラ、企業名公表と違反行為明示 抑止へ法成立

経済
ビジネス
2019/5/29 11:50 日本経済新聞 電子版
職場でのパワーハラスメントパワハラ)防止を義務付ける関連法が29日、参院本会議で可決・成立した。企業に相談窓口の設置や発生後の再発防止策を求め、悪質な場合は企業名を公表する。具体的なパワハラ行為も明示する。働きやすい環境を整え、社員の退職や意欲低下などを防ぐ。
労働施策総合推進法や女性活躍推進法など計5本の法律を改正する。パワハラを「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動」などと定義。社員がパワハラをした場合の処分内容を就業規則に盛り込むほか、相談者のプライバシー保護の徹底も求める。
パワハラが常態化しており勧告しても改善が見られない場合には企業名を公表する。大企業は2020年、中小企業は22年にも対応を義務づけられる見通しだ。
具体的にどのような行動がパワハラにあたるかの線引きは、厚生労働省が年内にも策定する指針で示す。厚労省は現在、たたくなどの「身体的な攻撃」や一人だけ別室に席を移すなど「人間関係からの切り離し」といった6種類の行為をパワハラとみなしている。こうした類型を基に、どのような指示や業務内容がパワハラにあたるかを定める。
パワハラ対策法案が可決、成立した参院本会議(29日)
パワハラ対策法案が可決、成立した参院本会議(29日)
指針では、直接的な雇用関係がない就活生やフリーランスに対しても、ハラスメント行為を防ぐよう企業に求める方針だ。社外の相手に対するセクハラやパワハラも禁じるよう、就業規則に盛り込むことなどを想定する。就活生へのセクハラなどが問題になっているのに対応する。
エン・ジャパンが2017年に実施した調査では、45%の企業が社内のパワハラを把握していると回答した。「精神的な攻撃」が76%ともっとも多く、本人の能力を超えた「過大な要求」が24%、「人間関係からの切り離し」が19%で続いた。
だが「パワハラがあると把握していても有効な対策法がわからない企業や、社内規定や罰則はあるが運用できずにいる企業も多い」(同社)という。
厚労省の調べでは、従業員が1000人以上の大企業では88%が相談窓口の設置などパワハラ対策を実施していると回答。だが従業員規模が小さくなるほど割合は下がり、99人以下の中小企業では26%にとどまった。
本業以外に取り組む余裕が無い中小企業も多く「法律で義務付けても、どこまで実効性のある枠組みを作れるかは不透明だ」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長)との指摘もある。人手不足が続くなか働きやすい環境を整えることは、職場の離職防止や社員の意識向上に欠かせない。