<流離いの雀士魔神、神との戦い>

<流離いの雀士魔神、神との戦い>

中学生の頃面白半分に始めた麻雀だが、本格的な打ち回しを覚えたのはずっと後のことである。
一人で遊べる雀荘が少なかった頃、街の片隅にフリー雀荘を経営している変りものの夫婦がいた。
いつしか暇さえあれば遊びに行くようになり、美少年だったおいらは(^^;客や夫婦にかわいがられるようになった。
学生だったので金があるわけじゃなく、お茶くみなどを手伝いながらもっぱら観戦させてもらった。
仲睦まじい夫婦は、冗談を連発させていつも客を楽しませていた。(^O^)

おかみさんも凄腕の雀士だったが、旦那はすさまじい打ち手でメンバーが足りない時に入るのだが、負けたところを見たことがなかった。
そんな旦那が、たまに麻雀を手ほどきしてくれた。
上手くならないわけがなかった。
やがてメンバーに入って打つようになり、そして負けなくなった・・・

月日が経って・・・・・・・
仕事が一区切りつき、次の開発プロジェクトまで間が空いたそんな頃。
ご多分に漏れず行きつけの雀荘に入り浸っていた。
おいらの雀風は「好牌先打」だ。
先を読んで、不要となる牌を早々に見切って処分する。
たとえば、[三][四][四]あるいは[一][三][四]と手にある時、早い段階で[四]を処分する。

場が進行し煮詰まって来た時、おいらがビシッと危険配を通す。(`o´)
対戦相手の注目が集まる。
勝負に来てるということは聴牌の可能性が高い。
[四]の捨て牌が早い段階にあるとき、この近辺は安牌に見える。
[二][五]の筋は比較的無警戒で出てくるのだ。
手の広がりをある程度犠牲にしたこの打ち方は、きちんとした戦略・戦術が無ければ不利な打ち回しである。。。

行きつけの雀荘のマスター(いつもは振り込むことがない)が、あまりにもおいらに振り込むので、後ろで半日ほど見ていたことがあった。
そして言った「不思議な打ち方ですね。どこで打っても負けないでしょう・・・」
おいらの打ち回しを見た後、マスターはさらにおいらに振り込むようになった。。。(^^;
向かうところ敵無し、麻雀で十分食っていけると思っていた。
そんなとき、信じがたいことに遭遇する!

所場代がたしか半荘500円、26,000点持ち30,000点返し、点ピンでウマがニートー(2,000 1,000)三コロ1,000通し。
詳しい説明は省くが、三コロ(一人勝ち)トップで、プラスの点棒分の他に19,000円が入ることになる。
つまり2位じゃ駄目なんです。1位にならないと。。。(^^;
トップが取れない・・・
四人で戦うわけだからトップを取れる勝率は1/4。
よほどついてない時でさえ1/10ということはない。
ところがトップがとれないのだ・・・(`o´)

むきになればなるほど土壺に填って、もがけばもがくほど底なしの沼に沈んで行く・・・
こんなことがあるはずがない、これは夢だ現実の世界では起こりえない(確立になる)・・・
手換え品変えしても、ことごとく裏目に出る・・・2.3日ならあり得るだろう・・・
2.3週間もひょっとしたらあるかも知れない・・・それが数ヶ月続いた・・・
役萬を上がりトップを確信する、そんなときでさえオーラスの親番でW役萬をつもられ逆転された。
馴染みの雀荘である、プロはいない。
セミプロは数人いるが、おいらもそのうちの一人である。
いつもはカモにしている相手が神々に見えてきた...

明白に神との戦いである。
しかし、勝ち目のない神との戦いであっても、トップを取るまでは退くわけにはいかない。(`o´)
精神状態は普通でなくなっていた。
ここで尻尾を巻いて逃げたら、これからの人生も負け犬になる・・・
すでに数百万を失っていた。
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そして、ついにそのときが来た。
なんの感動もなかった。
おいらは、その日以来牌を握っていない。
「足を洗ゑ!」。。。神の声である。。。と、思った。

流離いの雀士魔神...完